私は質屋をやっている 熊谷政喜

 先生は同じ時、「僕は日本で質屋もやっている」といった。義兄たちは「質屋?」ととんきょうな声を出した。質屋とは日本でもアメリカでも同じように高利貸しの別名である。先生はこう語った。
「そうなんです。ただしわたしんところの質屋や、金目のものでなければ金を貸さないとはいわない。時計でなければ・・・洋服でなければ・・・とは言わない。鍋でも、洗面器でも、弁当ガラでも、何でも質草にとる。朝飯を炊いて夕飯を炊く時まで不要な鍋や釜や茶碗などは、喜んで質草にしてやる。
 そうすれば仕事に行っている留守中に人に盗まれる心配もあるまいし、最低限度の必需品だから、質流れになることなどまずないし・・・私に言わせれば、時計でなければ・・・金の指輪でなければ・・・というたぐいの質屋は、放蕩息子を助長したり、マージャン賭博を奨励したりすることになるが、私の質屋は、家を留守番もおけないほどの貧乏人のために奉仕し、こういう人々が安心して働けるように助けているのです」(熊谷政喜 『百三人の賀川伝』から転載)