都銀最下位行を上回るろうきんの資金量

 4月20日、全国労働金庫協会の幹部と懇談する席があった。ろうきんは全国に13ある。もともと都道府県単位で設立されたが、統合が進んでいて、県単位で残っているのは長野、新潟、沖縄の3県のみとなっている。近く全国の労金が一つになるそうだ。
 驚くべきはその資金量である。昨年度末で16兆円を超える。ゆうちょ銀行の177兆円や三菱東京UFJ銀行の100兆円にははるかに及ばないが、都銀の一角である埼玉りそなを上回る規模なのである。特に支店数は663と三菱に次いで2位ときめ細かいサービスを誇っている。
 大手都銀はほとんどの支店が東京や大阪など大都市に集中していて、地方都市では実は使いにくい。小生の出身地の高知県では都銀の支店は「みずほ銀行」しかない。みずほ銀は各県に支店があった日本勧業銀行を母体の一つとしているからで、今では金融機関同士が相互にATMを使えるようになっているが、その昔、旅先で都銀のカードほど不便な存在はなかった。小さな県でも複数の支店があるのは元国営のゆうちょ銀を除けば労金だけだったのだ。
 イギリスでは2000年以降、生協がコンビニ化し地域の郵便局との提携が進んでいるが、実はセブン―イレブンのATMと最初に提携したのは労金だったのである。今も取り扱い金額はトップなのだそうだ。サラリーマンは労金の口座をけっこう生活資金として使っているのだと知って少々驚きがあった。
 小生も労金の口座を持っている。共同通信労組で加入していて「通帳」も「カード」も持っていない。労金は労組を窓口に組合員に口座を開設している。もちろん個人での加入も可能なのだが、ほとんどが労組経由の加入である。労組の専従職員が預金の出し入れをしているので、実態はあまり知られていない。小生の場合、マイカーの頭金として毎月定額を貯金しているが、給料から天引きされるので便利がいい。
 労金の悩みは金融機関の性格上、企業への貸付ができないことである。最近、NPO向けの融資が解禁されたが、まだ金額は多くなく、貸付のほとんどが個人のマイホーム向けローンである。おかげでバブルとはまったく無縁の経営が続けられたのだそうだ。(伴 武澄)