地域医療を“貸しはがし”から救った草の根の力

 NBonlineで内藤真弓氏が「地域医療を“貸しはがし”から救った草の根の力」という意味深いコラムを書いている。いくつか視点がある。まずは金融機関の「貸しはがし」が病院にまで及んでいる点。画一行政のもとで財政からの支援もまさに"貸しはがし"状況が進んで、地域の診療機関が危機にひんしているのはここ数年の傾向で、決して見逃しにできない。

 もう一つは消費組合が運営している医療機関がまだ全国にいくつもあるということである。1932年、賀川豊彦新渡戸稲造らと組んで東京に「東京医療利用組合新宿診療所」を開設し、中野総合病院となった経緯はあまり知られていない。病院は医療法人が開設するという常識に挑戦した。医療保険がほとんど整備していない時代に、賀川が切り開いた天地はまさに革命的だった。つまり医療も助け合いの協同組合で行えば誰もが病気になっても困らないというものだった。当然ながら、 協同組合による病院設立は、当時の医師会から大きな反対運動を受けた。

 現在の中野総合病院は「生協法」のもとにあり、JAが運営している厚生連の病院は「農協法」の管理下にある。厚生労働省は「病院=医療法人」の元で一元管理しようとしているが過去に設立された協同組合立の病院だけはどうにもならないのである。ちなみに株式会社による病院も少なくない。麻生首相の親戚が運営する飯塚市の「麻生病院」は株式会社である。

 地域医療を“貸しはがし”から救った草の根の力