2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

29 「愛の王国を建てよう」(1948年10月号)

革命は一日にして成る。ザア・ニコラスは、クロンスタツトの砲声に驚き、ケレンスキーは戦わずして逃げた。キールの一撃はイザル・ウヰルヘルム三世の王冠を射落した。 然し、愛は一日にして成らない。 愛が一日にして成らないから、民衆は容易なる剣銃の道…

世界国家28 武蔵野のかえる

桜はまだ蕾を綻ばせず、麦は大地から、恐る恐る首をつき出して今年の天候を伺つている矢先に、武蔵野の蛙は元気よく、冬眠から醒めて産卵をはじめているのだ。蛇の目ざめる前、野鼠のあばれ出す以前に、裸坊主の蛙は敵のいない事をよく知つて、ちゃんと生命…

世界国家27 涙の蒸発(1948年9月号)

久しく訪れざりし 讃岐豊島に 今日は また帰つて来た。 日華戦争から 太平洋戦争まで 巣鴨刑務所を出て ことに自らを追放し 島影に祈つて もう三年の歳月はながれた。 その間 日本は 倫落から 倫落へ 亡国の悲哀を味つた。 集団強盗は横行し スリは駅にあふ…

世界国家26 刀剣は止針にも値せず(1948年9月号)

剣が社会を作つていた時は、もう過ぎた。刄が日本魂だなどと考えている時は、もう過ぎた。愛の外に日本の精神はもつてはならない。愛は最後の帝王だ。愛の外に世界を征服する者はない。世界帝国の夢想者は凡て失敗した。刀剣の征服は一瞬であつて、その効力…

世界国家25 世界国家と警察(1948年9月号)

世界国家と警察制度 世界国家の創設 日本は新憲法の前文とその第九条とにおいて、戦争を放棄して平和国家の建設を宣言した。戦争放棄を宣言したのは、文明国としては三度目である。第一回はちようど百年前の一八四八年二月にフランスが行い、第二回はスペイ…

世界国家24 完全なる愛(1948年9月号)

完全なる愛 キリストは。我儘な道を歩まず、疲れを知らぬ人間として歩いた。しかも、人間として自分の意識を目醒めさせて、神の如く歩いた。人間の中に神の力が帰つてきて、その証明にならなければ宗教は役に立たぬ。 キリストは孔子や釈迦とも違つて、完全…

世界国家23 神と永遠の道を撰べ

――暴力主義と唯物主義を排す―― 闘争主義を排す 天地宇宙の理法は、ニーチエ、トライチユ、スチルネル等が唱導じ日本の軍閥が考えた「闘争が宇宙を進化せしめる」というようなものではない。その反対だ。互助が巧く行けば行くほど、進化は早い。動物の生態研…

世界国家22 科学と宗教の調和その2(1948年7月号)

成長にも、成長を早くしていいか、遅くしていいかに就ての選択性が働いている。一方に成長素があると、他方に成長を抑制する抗成長素(AVITON)がある「+」の「成長」力「−」の反成長力がうまく組合わされて、調和している。卵ではきみに成長素があると、し…

6年間アフガンで戦災孤児救済を続けた生井さん

賀川豊彦賞を授けたい二人目の人物と最近出会った。2002年から6年間にわたりカブールで戦災孤児救済を続けた生井隆明さんだ。頭部に弾丸が残ったままの少女ファチマちゃんが日本で摘出手術を受けたというニュースは記憶にあると思う。その少女を奇跡的に発…

都銀最下位行を上回るろうきんの資金量

4月20日、全国労働金庫協会の幹部と懇談する席があった。ろうきんは全国に13ある。もともと都道府県単位で設立されたが、統合が進んでいて、県単位で残っているのは長野、新潟、沖縄の3県のみとなっている。近く全国の労金が一つになるそうだ。 驚くべ…

賀川豊彦関係団体・協同組合協議会が発足

4月20日、日本生活協同組合連合会、日本コープ共済生活協同組合連合会、全国労働者共済生活協同組合(全労済)、全国労働金庫協会、(ろうきん)、全国共済農業協同組合連合会、共栄火災海上など6団体が集まり、「賀川豊彦関係団体・協同組合協議会」を発…

賀川記念館がグランドオープン【神戸新聞】

神戸市の賀川記念館が17日、グランドオープンした。5階建ての4階にミュージアムを開設。生活協同組合運動や関東大震災被災地での活動、平和運動など賀川の幅広い功績を12のブースに分け、写真や映像で紹介した。記念館は今後、賀川の研究、発信事業を…

(9)−雲水遍歴

賀川豊彦は1914年、初めてアメリカの土地を踏みます。プリンストン大学への留学で、マヤス先生らキリスト教の恩師たちの力添えによって実現しました。授業料は免除されましたが、アルバイトをしながら3年間アメリカで過ごしました。この時、アメリカで…

世界国家21 科学と宗教の調和(1948年6月号)

古代エヂプトでは、科学と宗教は完全に調和していたが、近代における自然科学の進歩により、科学と宗教が分離するに至つた。哲学者カントは純粋理性批判において一旦、科学と宗教とを分離させたが、実践理性批判では、彼の形式的合目的論においても、一度科…

世界国家20 潮時を忘るな(1948年7月)

キリストは「時」を行動に対する大切な要素として、いつも計算に入れられた。 舟には潮待ちと云うものがある。逆潮では、瀬戸内海でも、朝鮮の仁川でも、九州の有明湾でも、運航の出来ない場合がある。キリストすら、エルサレム行に「時」を待ち合せられた。…

(8)−フレッチャー・ジョーンズ物語

もう一つ、エピソードを話したい。2008年春、松沢資料館の杉浦秀典氏から「こんなDVDをもらったんだけれども、興味ありますか」と一片のDVDを手渡されました。オーストラリア人がつくった「フレッチャー・ジョーンズ物語」という1時間ほどのドキ…

(7)−kagawa Revisited

2004年6月、スコットランドのグラスゴーを訪ねました。その2カ月前、「賀川、賀川」と言っている牧師さんがいるということを友人から聞きました。賀川が世界的に知られた人物だということは書物で読んでいましたが、正直言って賀川の信奉者たちが針小…

(6)−地球規模の発信

戦前、日本のことを欧米語で発信した人は多くない。思い起こすのは新渡戸稲造と内村鑑三、岡倉天心、鈴木大拙。そして賀川豊彦がいました。 『武士道』の新渡戸稲造は説明する必要もないでしょう。台湾の李登輝元総統が言及し始めてこの10年、日本でも見直…

(5)−侵略者の末路

賀川純基さんの「予見」には登場しませんでしたが、そのころ国際平和協会の機関誌「世界国家」で賀川豊彦が書いた「少年平和読本−侵略者の末路」という文章を読んでいました。ロシアの作家トルストイの有名な童話『イワンの馬鹿』をモチーフに戦争を論じたも…

(4)−第三の道

二〇〇三年一月、エース交易の機関紙『情報交差点』に「EUの理念の一つとなった友愛経済の発想―キリスト教伝道者・賀川豊彦― 」という文章を書いたことがあります。ヒントはその前の年の純基さんとの会話にあったのはいうまでもありません。直感的に書いた…

(3)−空中征服

空中征服 環境問題と市政請負制 賀川豊彦の小説『空中征服』は二〇〇四年に読みました。大正11(1922)年に大阪日報に連載したものを同年12月に改造社から出版。出版した月だけでも11版を重ねました。『死線を越えて』がベストセラーになった2年…

(2)−賀川の予見

第一章 賀川豊彦の予見 賀川豊彦と出会ってからかれこれ9年になります。財団法人国際平和協会の理事になって、本棚にあった機関誌「世界国家」を読み、いつの間にか古本屋で絶版となった賀川関係の著作を買いあさっていました。中には『賀川豊彦全集』(全…

(1)−はじめに

賀川豊彦のことを書いてきました。一向に完成しません。自分を励ます意味でこれまで書いてきたことをブログにアップすることにしました。足らない部分ばかりですが、その部分を埋めていきながら「Think Kagawa」を完成に近づけたいと思います。たぶん50回…

賀川督明さんの「万人は一人のために」

昨年11月のシンポジウム「賀川豊彦とともに明日の日本と協同組合を考える」のDVDで賀川督明さんのあいさつを聞き直しました。なかなかいい話なのでThink Kagawaに収録します。 ------------------------------------------------- 2009年の今年は、豊…

大阪労働学校案内

宣言 我等は有産階級の独占から教育を解放すべき事を要求する。夫れが有産階級の独占に帰している間、学問は遂に虚勢された馬の如くであろう。 そして、夫れは学問を司どるミネルバの神に対する冒涜であらねばならぬ。我等は学ぶべき権利を持って居る。我等…

阪神医療生協が「死線を越えて」上映会【毎日新聞4月1日地方版】

映画:「死線を越えて」−−尼崎で3日、上映会 /兵庫 ◇賀川豊彦、貧困問題取り組んだ半生 http://mainichi.jp/area/hyogo/news/20100401ddlk28200462000c.html 神戸で貧困問題に取り組んだ、キリスト教社会運動家・賀川豊彦の半生を描いた映画「死線を越えて…