2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

賀川豊彦をデビューさせた雑誌「改造」

賀川豊彦が東京の改造社からベストセラー『死線を越えて』を発刊したのは32歳の1920年10月だった。プリンストン大学へのアメリカ留学から神戸に帰国して3年。大阪市の「有限責任購買組合共益社」と神戸市の「有限責任神戸購買組合」を相次いで設立…

岡本好廣氏講演会「賀川先生の思い出」

協同組合運動の推進者賀川豊彦献身100周年の記念事業の一環として、賀川豊彦最後の弟子といわれる元日生協常務の岡本好廣氏を招き、「賀川豊彦先生の思い出」と題した講演会が9月8日開催されます。 テーマ:「賀川豊彦先生の思い出」〜生誕120年を記…

時計史に見る賀川豊彦

現在の農協の原形をつくったのは賀川豊彦だった。1922年、福島県でキリスト教の伝道の傍ら農業指導をしていた杉山元治郎と日本農民組合を大阪で結成した。小作料の引き下げなど農民の立場から団結して地主に対抗。250人で始まった運動は3年後には7…

グラミン銀行と中ノ郷質庫信用組合

2006年のノーベル平和賞を授章したバングラデシュのムハマド・ユヌスさんが同国で始めた「グラミン銀行」は無担保で貧しい人々に融資する金融だ。すでに融資規模は60億ドルに達するというから大したものである。 1974年、チッタゴン近郊のジョブラ…

世界国家の話(8)−人種平等の原則

(『世界国家』1951年1月号から転載)賀川豊彦 「白人のほか、お断り」 世界憲法のシカゴ案が最も力を注いでいるのは、前回にお話しした経済的平等と、もう一つは人種平等の原則です。あらゆる人種的差別は撤廃されて、全地球上の人種は一切平等の権利義務を…

世界国家の話(7)−経済平等の原則

(『世界国家』1950年12月号から転載)賀川豊彦 社会主義的だとの批判 世界憲法シカゴ案の人権宣言は、フランス革命やアメリカ独立の際のそれぞれにくらべて、はるかに具体的で、また端的、率直です。特に貧困の束縛、奴隷的搾取的な労働からの解放や、人種…

世界国家の話(6)−基本的人権について

(『世界国家』1950年11月号から転載)賀川豊彦 経済、社会、文化面 今日の世界をながめて見ますと、貧富の懸隔は甚だしく、経済的搾取は公然と行われて、そのために労使間の闘争は絶えることがありません。社会的不安は、ますます募るばかりで、人種や皮膚…

世界国家の話(5)−軍隊はどうなるか

(『世界国家』1950年10月号から転載)賀川豊彦 戦争は過去のものがたり 立法、司法、行政がすみましたから、こんどは軍隊です。 世界連邦は前にも記したように、地球全地の人民の、人間としての精神的優位と物質的福祉増進を目的として組織される法治社会で…

世界国家の話(4)−司法権と護民官

(『世界国家』1950年9月号から転載)賀川豊彦 世界共和国では、前に申したように人種差別を始めとし、階級、性、信条、教義等の差別を禁じ、以前には、しばしばそれが戦争の原因となった物資原料の入手や、土地のエネルギー源の利用などについての妨害行為…

世界国家の話(3)−連邦議会と大統領

(『世界国家』1950年8月号から転載)賀川豊彦 無政府状態の世界 世界国家は一つの法で治められる社会ですから、法律が一ばんモノをいいます。今日の世界では、なるほど、各国家の内部だけでは、それぞれ法があり、法によって治められていますが、これが世界…

世界国家の話(2)−国家の終焉

(『世界国家』1950年7月号から転載)賀川豊彦 「最近の攻撃武器の発達は、歴史上その比を見ない大量の人殺しの手段を作り出しました。これ等の兵器は他からの攻撃を防ぐというよりは、はるかに侵略に役立ちます。ですから、もし将来戦争の起きるのを放任す…

世界国家の話(1)−原子爆弾の危険

(『世界国家』1950年6月号から転載)賀川豊彦 戦争は絶滅させることができるでしょうか。ブロッホという学者は「科学が発達すれば、自然に戦争はできなくなる――」と申しました。この予言は或る点までは的中しました。原子爆弾や水素爆弾が出来たというので…

賀川豊彦『一粒の麦』が再版

賀川豊彦『一粒の麦』が、イエスの友会三河支部やみかわ市民生活協同組合の関係者らによって再版された。1983年に社会思想社が発行した文庫本を最後に絶版となっていた。 「一粒の麦」は、賀川が明治40年から療養のため過ごした豊橋、蒲郡、旧津具村で…

賀川豊彦の兄弟愛経済(1)

オルタナティブな道 今どき協同組合といったら旧世代の発想のように聞こえるかもしれない。だが、ソ連の崩壊以降、わが物顔に暴走する資本主義経済に対抗する経済体制の存在がいまこそ不可欠であると考えている。それが協同組合だとは言わない。だがオルタナ…

グラスゴーでの歓喜あふれる出会い

財団法人国際平和協会の機関誌『国際平和』2004年冬夏号から転載 スペーストピア社長 若松 立行「友だちの牧師で賀川豊彦にえらく傾倒しているひとがいるんだ。スコットランドの人でね。一度会ってみませんか」 昨年夏、スコットランドでグラスゴー大学…

ロバート・オーエン再発見(1)

6月初旬に一週間ほど南スコットランドを歩いた。グラスゴーの酒場で一人の日本人に出会い、ロバート・オーエンのことが話題になった。近郊にオーエンが繊維事業を始めた場所で、いまでは世界遺産に登録されているニューラナークという場所があることを知ら…

5つの賀川記念館

賀川豊彦が人々の記憶から消え去って久しい。ただ地道に賀川研究を続け、賀川の業績を継承してきた記念館が全国に5つもある。 第一は「賀川豊彦記念・松沢資料館」がある。関東大震災以降、賀川が住んだ世田谷区上北沢に松沢教会と併設されている。賀川が1…

賀川豊彦著『死線を超えて』

『死線を越えて』 賀川豊彦著スラム街に移り住んで、他人のために自己を捧げ尽すというキリスト教的隣人愛を実践した著者の自伝的小説。後半は特に、スラム街に住むさまざまな人々の生活記録ともいえ、その中での主人公の働きは万人の胸をうつことだろう。..…

いまなぜ賀川豊彦なのか

来年2008年は賀川豊彦が神戸の葺合新川のスラムに入って救貧活動を始めて100年となります。賀川ゆかりの神戸と東京で賀川豊彦献身100年記念事業実行委員会がつくられ、筆者は国際平和協会のかかわりから1月、広報委員長に任命されました。 日本と…

日本のNPO歴史と現状

第2章 日本のNPO歴史と現状(1)日本の民間非営利組織の歴史的背景1.組織概念からみた歴史的特徴 NPOといえば何か新しいもので、日本の伝統から遠い存在であるかのように思われるが、必ずしもそうではない。営利を目的しない組織は、恐らくどのよ…

世界連邦憲法シカゴ草案

世界憲法シカゴ草案前文 全地球上の人民は人問が精神的卓越と物貿的福祉において向上することが全人類の共同目標であり、この目標を迫求するためには普遍的平和の実現が必要条件であり、更に平和の必須条件として正義の確立が必要とされ、平和と正義とは興亡…