神の国運動

近江の兄弟ヴォーリズ(3) 賀川豊彦

5 メリル・ヴォーリズとその周囲の人々は面白い群団組織を持っていた。それは矢張りヤンキー式の一種のデモクラシーである。ヴォーリズは今ではどうか知らぬが、極く最近まで自分の労作した収入に対してすら、全酬権を主張しないで従業員の合議制で凡てをや…

近江の兄弟ヴォーリズ(2) 賀川豊彦

2 兄弟メレル・ヴォーリズは人好きのする男である。私は彼の最初の時からの活動をよく知っている。彼が神戸衛生院に入った時と、殆んど同じ時に私は神戸衛生院を出て、明石の肺病院に入院した。 その後の彼の苦闘を私はよく『マスタード・シード』で読んで…

近江の兄弟ヴォーリズ(1) 賀川豊彦

思い出しても尽きないのは、安土城址の回想である。 私はあれほど美しい壮大な廃墟を知らない。比叡山から見た琵琶湖も美しいが、安土城から見た琵琶湖もまたまたなんとも言えない哀調があって美しい。 森が雑木でできているのが、いぢらしいばかりでない、…

イエスの友会、月刊誌『雲の柱』の誕生

大正8年12月23日、の夜、神戸の海運俱楽部で賀川の友人たちは、賀川夫妻を主賓にして「伝道満10年記念会」を催した。賀川は謝辞をのべてから、 「大正9、10年は労働運動に専心するが、11年以降は、本来の職務として与えられた精神運動にかえる考…