ユヌス氏を囲んで本音でトーク1

  • Q ソーシャルワークとソーシャルビジネスの違いは
  • A お金を持っているほど銀行は相手にしてくれる。現在、世界の人口の3分の2の40億人は銀行システムの外にある。銀行は信用力がないというが、われわれは挑戦している。マイクロクレジットは世界の1億5000万人に提供されている。1億3000万人が女性だが、まだまだ行き渡っているとはいえない。教科書には貧困解決のためには雇用が大切だと書いてある。だが途上国のどこに雇用があるというのだ。投資も必要だが外資に頼らざるを得ない。雇用を創出するときには女性のことも考えてほしい。男がやしなうだけでない。女性も働けるのだ。マイクロクレジットは特に女性に使い勝手がいい。工場にいかなくてもすむ。賃金を貰わなくてもいい。自分で仕事を始めればいいからだ。ウシを飼う、牛乳を売る、それを繰り返していけば収入が増える道ができる。グラミンは生活を変えるためにお金を貸すのだ。
  • Q マイクロクレジットが日本で広がらない理由について。宗教も原因しているか
  • A ニーズがあまり高くない。宗教も重要だ。取り残された人々をケアする役割が宗教にはある。イスラム教では、富の2・5%を差し出すことが求められている。重要な五つの柱の一つである。収入ではなく、持っているものという意味で、多くの人がやっている。キリスト教でもチャリティーが重要で、教会が役割を果たしている。モルモン教徒は10%を差し出すことが求められている。教徒は2年間ミッションでボランティアしなければならない。政府の後押しも必要だが、限界があり、そこにボランティアの役割がある。財団への寄付の非課税も大きい。その分、政府が差し出していることになる。アメリカでは多く行われ、財団を通じて何十億ドルが使われているが、ほとんどが国内で国外に流れるのは10%以下である。
  • Q ソーシャルワークのいい点は
  • A ソーシャルワークとソーシャルビジネスは対立しない。同じことを目指している。ソーシャルワークはすぐに始められる。人道や災害支援で駆けつける場合だ。ソーシャルビジネスは準備や設計をして投資を呼び込むが必要がある。ソーシャルワークの後にソーシャルビジネスが来る。ソーシャルワークは人助けでソーシャルビジネスはそれを乗り越えたところにある。ソーシャルビジネスは利益のことを考える必要がない代わりに地球のこと環境のことをだけを考えればいい。
  • Q グラミン銀行の成功の秘訣は
  • A まずすぐに反応したことだ。それほど準備はしなかった。時に誤ることもあったが、翌日あらためた。ケースバイケースで、個人が対応できたし、学生たちの役割も重要だった。とにかくやって経験を積み重ねたことだ。アカデミックの世界は理論を求め俯瞰的に見ようとするが、われわれは地上からの視線でいろいろと細かく見える。止まらないで避けることもできる。目前のことしかみえないからミミズの目だ。上から見ると細かく見えない。いろいろ想像してしまう。もちろん両方の視点が必要だ。グラミン銀行の引き金は高利貸の存在だった42人の借金がたった27ドルで、頭を悩ませることなくやっただけ。グラミン銀行は32年間に32以上の会社をつくってきた。年に一つだ。失敗例もあるが次々とつくってやってみている。経験を積み重ねることも重要だ。
  • Q ESDを学んでいる。研究室にこもらない研究だ。洪水にあった人が助けてくれた人には返せないが、そういう例はあったか。
  • A ボランティアワークは続かないことが多い。グラミンはボランティアでもできたが、しなかったのは、やりたいときにだけやるのでは永続しないと思ったから。銀行は特定の責任を求められる。責任を取れないのがボランティアの弱みでもある。パートタイムの仕事と使い分ける必要がある。
  • Q グラミンはどうして5人グループ制をとっているのか
  • A グラミン銀行では5人チームで責任者を選ぶ。メンバーがお金を借りるとき、委員会にかける。使い道や金額が適当かどうかを話し合う。それからわれわれが掲げた16条件についても話し合う。協力が重要なのだ。
  • Q ?
  • A 4年前、特別プログラムを組んだ。乞食にお金を貸すという。調査を始め、そうして乞食を始めたかをまず聞き出す。一件一件回って「もらったお菓子やおもちゃを売れば」と問い掛ける。そうするとあなたのオプションが生まれる。乞食はいいアイデアだった。人気が出て「自分もやりたい」と1000人ものスタッフが手掛けるようになった。ただ、一人で一人の乞食しか世話してはいけないと言った。グラミンには2万8000人ものスタッフがいるから2万8000人の乞食を助けられる。もっと世話をしたいということになって「二人まで」とした。グラミンは今では10万人の乞食の世話をしている。これはあくまでボランティアの世界で責任はない。
  • Q グラミン銀行は万能ではないとユヌスさんの著書にあった。
  • A グラミン銀行とグラミンフォンはそれぞれ独立している。私がつくった組織にグラミンとつけているだけだ。グラミンフォンの株は持っているが、融資はしていない。グラミンテレコムという投資会社が投資している。パートナーはノルウェーのテレノール。アメリカのソロス財団が1100万ドル投資してくれて、グラミンテレコムを通じてグラミンフォンに入れた。結果的に38%の株式を支配することになった。6年後にテレコムがテレノールの持ち株を買い入れることになっていて、ソーシャルビジネスにするつもりだったが、約束は単なる紳士協定だといってまだ実現していない。いまバングラデシュには6社の携帯電話会社があり、利用端末は4500万人だが、グラミンは53%のシェアを持っている。