世界連邦日本大会で「グローバルタックス」提起

 11月22日、金沢市で開催された世界連邦日本大会に参加した。横浜市立大学准教授の植村雄彦氏が基調講演し、国境を越えて課税する「グローバルタックス」について解説、2006年からフランスを中心に13カ国で実施されていることを強調した。エイズ結核など途上国の病気撲滅を目指す国際的機関の財源となっている。2000年9月、クリントン大統領の時代に世界の首脳がニューヨークに集まり、ミレニアム宣言をし、貧困の撲滅を誓い合ったが、目標年次が近づいているのにほとんど実行が伴っていない。
 グローバルタックスの考え方は単に途上国支援だけではない。上村氏はまさに世界連邦的“課税”の一つといっていい手法が織り込まれていることを示唆した。(伴 武澄)
 以下、金沢市議、森かずとし氏の報告を転載する。

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 「グローバルタックス」。耳慣れない言葉だと思います。国際的な租税制度、すなわち独走する多国籍金融資本による強者のカジノゲームを規制し、弱者の側から貧困格差を是正する国際間の富の再配分を実現する制度。「国際連帯税」とも言います。炭素税(環境税)、航空券連帯税(ファーストクラスに高い税を掛ける、その財源を用いて貧困地域の予防接種・衛生改善事業に国境を越えて投下する)はすでに一部で始まっています。構想段階のものでは、通貨取引税(ドービン税はその一種)、多国籍企業税、武器取引税・・。
 森かずとしのワイワイ談話室
 http://blog.goo.ne.jp/kazu3333m/e/ed6c2a0a4e95278cc1d6d3c01ee88a2d
 11月22日に開催された世界連邦日本大会で、この国際連帯税が基調講演されたのです。講師は上村雄彦横浜市立大学準教授。演題は「持続可能なグローバル福祉社会をつくるには」。言うまでもなく、世界の戦争や紛争は、民族対立や宗教対立の外観をとってはいますが、その本質は、軍産複合の巨大多国籍資本、その背後にある金融巨大資本の利益のために引き起こされるものであることは、近年ではアフガン、イラクでの対テロ戦争が明らかにしています。これを正当化し、自国民はもとより世界の一般人を軍や戦争政治に同意させるために信じがたい謀略さえ躊躇しません。9.11の疑惑は、そこにあるわけです。
 世界連邦運動は、どちらかというと保守層のなかの穏健派の運動という側面があるように感じてきましたが、世界連邦決議を上げている金沢の議員として会員になっています。存じ上げている平口理事長の見識が、政府に批判的な市民活動かをも集会に招き、ラジカルな問題提起を求めてきました。久しぶりに金沢に戻ったという日本大会で平口さんは、戦争の構造を規定し、平和を構想するにはこの構造を変える目的意識を持つ事が必要と、国際連帯税を提唱する上村講演を組み込んだのだと思います。
 武力で平和は守れない。では戦争がうち続く世界を現実的にどう変えるか。私にとっても極めて大きな問題意識です。そして社会の構造である経済のしくみを具体的に変える方策としてこの国際連帯税に期待を込めるのです。

 上村さんは、国際連帯税が世界で脚光を浴び始めていると言います。その理由を3点。?貧困や環境対策に必要な大きな資金を生み出す。?投機マネーを抑制し、グローバル金融市場を安定化させる。?現在の強者強国に偏重した不透明で非民主的で説明責任を欠く世界統治を透明で民主的で、説明責任を果たすものに変えることが出来る。この10月、国際連帯税をすすめるリーディンググループに作業部会が出来た。鳩山連立政権下で国際連帯税への積極的な姿勢転換が起こっている。

 私は、上村さんに、軍産複合体や巨大金融資本の強力な影響下にある国の政府をこのグローバルタックスに導き入れるプロセスはどう考察されているのですかと集会の中で問いました。その答えは、確かに困難な作業だが、政治の中には良心を持つ政治家が必ず存在している。そのパーソンと結び、勇気づけ、力を与える関与を行うことがその道筋を広げる。金融大国イギリスの中でさえ、今日の金融のゆがみを自己批判し、国際連帯税に賛意を示す金融庁長官が現れているとしました。

 私は、戦争が経済問題の解決のために、権力が発動するものと考えてきました。従って、経済システムを変えることで平和の枠組みをつくり出そうとする構想に大いに賛同するのです。徴税という権力行為を弱い立場にある人々の立場から適正に行い、その上に乗る政治・政策・施策を非暴力・連帯共生型に変えることが、日本国憲法前文の国際平和主義を実現し、平和的生存権を保障する国への道筋だと確信しています。

 世界連邦運動には、少々斜に構えていたのですが、日本大会講演、パネルは引き込まれる内容でした。高かったですが、上村さんの新刊著『グローバルタックスの可能性』(ミネルバ書房)を買いました。ご当人からのサイン入りです。(決してミーハーではありません。またご縁かも知れませんから・・)時間をひねり出して早めに読破しようと思います。

 今回は久しぶりに長文におつきあい頂きありがとうございました。