若いのに見上げた両親です。

 次はパルモア病院で目のない赤ちゃんが生まれた時の話だ。感動的である。

 出てきた胎児を見た瞬間、産科医の李は血が引く思いがした。目が引っ込んでいて眼球がなかった。25年間、産科医をして初めての経験だった。それぞれの実家から来ていた祖父母たちは絶句して「そんな子はいらない」といった。李は出張先から駆けつけた父親に決して動揺しないようにと言って事実を告げた。
 「目がありません」。
 父親は赤ちゃんを見せて下さいと言った。赤ちゃんを見て「かわいい、私はこの子に一生を捧げます」と言った。その光景を見て初めて祖母も泣いた。

 母親には精神状態が不安定だからと言ってまだ赤ちゃんを見せていなかった。1週間が過ぎ、夫が「私が言います」と決断した。朝食後に話すことになったが、母親は子どもを育てる夢を語り始めた。その時、夫は打ち明けて、二人で泣いた。
 母親は言った。
 「家族のみんなが毎日二回も三回も来て、世話をやいてくれるでしょ。自分の子はもしかしたらダウン症かと思っていました。目がないとは夢にも思わなくて・・・。主人と力を合わせて頑張ります」
 李は「きょう、赤ちゃん見ますか」と聞いた。母親は「はい。私は大丈夫です」と答えた。その笑顔を見て李は泣いてしまった。
 わが子を見た母親はその瞬間「わぁ、こんなかわいい子だったら、早く見せてくれたらよかったのに」と大声を出して、頬ずりした。
 李は救われた思いがした。
 「若いのに見上げた両親です。あの人たちには負けます」。x(続)