貧困・温暖化対策へ国際連帯税検討 政府、航空券税想定【朝日新聞】

 http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201009260312.html
 グローバル化の恩恵を受けている経済活動に課税して、貧困や温暖化などグローバル化の影の部分の対策に必要な財源に充てる「国際連帯税」の創設に向け、菅政権が動き始めた。前原誠司外相は21日の国際連合の会合で、航空券税を含む国際連帯税の新設を検討すると表明。だが、業績が厳しい航空会社は強く反対しており、すんなりとは決まりそうにない。

 学者や国会議員らでつくる国際連帯税推進協議会は26日、「地球規模の課題解決のため、各国が協力して資金を拠出する新しいメカニズムが必要」とする政策提言を発表した。寺島実郎座長(多摩大学長)は「新しい税には拒絶反応も多く慎重な議論が必要だが、国境を超えて動く人はやはり500円、1千円くらいは責任を共有してもらいたい。政党の枠組みを超え、国家的な理解を得られる良い事例としたい」と話し、衆参両院の多数派が異なるねじれ国会にあっても、立法に向けて動き出すべきだと強調した。

 国際連帯税は岡田克也前外相が前向きで、外務省は来年度税制改正で「国際開発連帯税」の創設要望を8月末に提出。政府税制調査会は9月から課題整理の議論を始めた。前原外相も検討を表明し、実現への機運が高まった。

 では、どんな「グローバルな活動」に課税し、だれが負担するのか。外務省や推進協議会は、国際線航空券と両替・海外送金も含む通貨取引の二つを想定するが、外務省が要望で触れたのは航空券だ。

 国際連帯税はもともと、通貨取引税の考え方から広まったが、導入例はない。世界の主な通貨を対象とし、基金などで一括徴収するしくみが効果的とされるが、米国や中国は議論に積極的にかかわっておらず、具体化していない。

 一方、航空券税はフランスや韓国で導入済み。航空輸送はグローバル化の恩恵を大きく受けており、飛行機に乗れる「豊かな人」たちから少しずつ徴収するという考えであれば理解が得やすいからだ。

 だが、航空券への課税となれば、結局は乗客が払う運賃に上乗せされる可能性が高い。フランスでは国際線の場合、エコノミークラスで4ユーロ(約450円)、ビジネスクラス以上で40ユーロ(約4500円)の税金分が運賃に上乗せされている。日本でも海外と同様、国外に向かうすべての飛行機の航空券に税金をかける考え方が有力だ。

 海外からの観光客誘致などにも水をさしかねず、全日空の伊東信一郎社長は「航空券連帯税は言語道断。国際競争力をつけるうえでも反対だ」と主張する。政府の途上国援助(ODA)との関係をどう位置づけるのかも、議論が必要になる。(伊藤裕香子)

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 〈国際連帯税〉 世界的な問題の解決に必要な資金を調達するため、国境を超える特定の経済活動にかける税金。貧困や飢餓の撲滅などの国連ミレニアム開発目標の達成や、地球温暖化対策に必要な巨額の資金をどう調達するか、という考えから生まれた。通貨取引や国際航空券を対象とする仕組みが想定され、航空券税はフランスやチリなど10カ国以上で実施されている。

 世界連邦運動ニュース
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