神戸の賀川記念館に「天国屋」復活

 賀川豊彦の志継ぐ天国屋カフェ 住民憩う場に【神戸新聞2010/11/09 15:45】
 http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0003594634.shtml
 日本を代表する社会運動家賀川豊彦(1888〜1960年)が貧困者の栄養改善のため、100年前に開いた食堂「一膳(いちぜん)飯天国屋」の精神を引き継ぐカフェが、神戸市中央区吾妻通5の「賀川記念館」で週3回、開かれている。「天国屋カフェ」と名付けられ、ボランティアが運営。秋から月1回の夜間営業も始まり、地域住民の憩いの場として定着しつつある。(大月美佳)

 同記念館に併設された教会の上内鏡子牧師(45)が「生きづらさを感じている人が食事を囲んで集える場をつくろう」と企画した。同記念館がオープンした4月、来館者がくつろげるカフェの役割も兼ねて、コーヒーや紅茶の提供を開始。その後、500円のランチも始めた。

 「天国屋」は賀川が1910(明治43)年11月、地域の貧しい人々に新鮮で栄養のある食事を安価で提供しようと、現在の同記念館近くに開店。しかし、無銭飲食が横行したため、3カ月で閉鎖に追い込まれた。

 11年の「救霊団(現・イエス団)年報」では、閉鎖の理由について賀川自身が「毎月10円以上欠損するのと、一寸(ちょっ)と悪魔が這入(はい)つたので」と説明。一方、正月には100人に無償で雑煮を振る舞ったことなど「天国屋」の成果にも触れ「金が出来たらまた開きたい」とも記されている。

 「100年間、活動が眠っていたので“4カ月目からの再スタート”です」と上内牧師。運営スタッフの中には、引きこもりの経験があり、社会復帰に向けたトレーニングの機会として手伝っている人もいる。

 9月から月に1回始めた夜間営業は、カフェのPRと資金集めのため。メニューはアルコール全品300円、手作りの総菜3品500円などで、毎回、地元住民らが何十人も訪れて夜遅くまでにぎわう。

 上内牧師は「同じ釜の飯を食うのは重要なこと。心が貧しくなりがちな現代で、気安く集い、悩みを分かち合う場にしたい」と話している。

 営業は木、金、土の午前10時〜午後4時。次回のナイトカフェは12月10日の予定。同記念館TEL078・221・3627