賀川督明さんのちょっといい話

 いま、私がいろいろなところに呼びかけているのは「11えん募金」の運動です。11えんの募金によって被災地とのご縁を紡いでいく取り組みで、「11」は、3・11はもちろん、アメリカ同時多発テロ事件の9・11、それにハイチ震災の1・12や阪神淡路大震災の1・17を連想する数字でもありますね。被災の記憶と支援を続けていこうというアクションでもあるわけです。神戸大学の学生たちが毎月11日に街頭募金をおこなっていますが、これに限らず、それぞれの団体や個人のやりやすい方法で始めてもらえたらと思います。

 集まった募金を被災地に携え、学生たちは現地に出かけます。今の大学生は阪神淡路大震災当時、幼稚園生ぐらいで、震災体験はあるけれど、復興のリアリティに乏しく、親たちの気持ちについていけてなかったですね。東日本の被災地を訪ねることで、「そうか、このことなんだ」というリアリティを持ち、「ぼくらのまちはまだ復興していない、痛みを持っている人がいる」ということに気づいたのではないでしょうか。だから今年の〝1・17〟には初めて参加した若者が多かったように思います。若者を東日本に送りこむことは、現地の復興支援に限らず、神戸の次代をつくる人たちの育成につながるのではないでしょうか。息長く取り組めるしくみをめざしたいものです。

 フクシマの原発事故以降、これまで中央集中でやってきた取り組みを分散すべきでないか、という認識が広まりつつあります。エネルギーだけでなく、食糧生産や下水道などあらゆる分野において……。そのほうが持続可能であるのなら、賀川記念館として放っておけません。私たちには、今を生きている人だけでなく、これから生まれてくる人たちも含め、暮らしの創造について取り組んでいくという基本姿勢があるのです。

 おりしも、2012年の国連の国際テーマは「すべての人のための持続可能エネルギーの国際年」と「国際協同組合年」です。そのせいか、最近では協同組合に関する講演依頼が多く、私は外野の人間として、ある意味無責任というか(笑)、非常に刺激的な提案をしています。生協は暮らしを支える運動体なのですから、新しい協同組合を組合員自らがつくるような掘り起こしをおこなってほしいと思います。上からかぶせる形で一部門にしてしまってはムーブメントになりにくい。たとえば、原発に反対するだけでなく、生産者の側に回り、エネルギー生産組合をつくるとか、そのような仕掛けが必要に思いますね。

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