十五 不景気風の浸込んでゐる高砂町にも、盂蘭盆の燈籠が彼処比処に吊られ初めた。裏通りを通ると塗られた儘、上塗りもしてない極貧乏な荒壁の長屋にも極彩色の燈籠が吊下げられてゐた。杉本英世はそれを眺めて、一種の淋しさを感じた。彼はその頃から忙しく…
十四『君、斎藤君、私娼ぢゃ不可ないんか、今日の世の中に公娼もあったもんぢゃないぢゃないか、君いくら土地の繁栄策だからと云って、今頃時代に逆行する様な遊廓設置運動も無いもんぢゃないか、君嗤はれるぞ、然し兵庫県ぢゃどう云ってゐるんか君?』 志田…
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