2012-03-02から1日間の記事一覧

傾ける大地-23

二十三 十二月の第二の木曜日の晩でゐった。木枯が浜の松を強く揺がせて、平面的に拡がった高砂の町には、宵の口から人通りも絶えてゐた。その晩祈時会の帰りに、英世は三上実彦と一緒になった。三上はつい愛子が明石の親戚に監禁せられてゐるといふことを、…

傾ける大地-21

二十一 加納町長が辞職の声明をしたのは、志田義売が水道敷設権の許可が下りたと云ふ報告をもたらして帰って来た前日のことであった。斎藤新吉は如何にも嬉しさうに、さうして亦加納町長に対する当付けから、志田から来た電報を持って、町役場に行ってそれを…

傾ける大地-20

二十 加納町長が辞職の声明をしたのは、志田義売が水道敷設権の許可が下りたと云ふ報告をもたらして帰って来た前日のことであった。斎藤新吉は如何にも嬉しさうに、さうして亦加納町長に対する当付けから、志田から来た電報を持って、町役場に行ってそれを見…