二十八 その日、高島頼之は、朝飯も昼飯も食はずに、電話で知らして来る開票の成績を、自宅で聞いてゐた。そして愈々落選と決まった時に、彼は奥の間に這入って泣いた。 杉本は四千九百二十三票の最高点で、美事(みごと)県会議員に当選した。当局の圧迫も…
二十七 其処へどやどやと、六人連れの一行が這入って来た。『いらっしゃい!』 と細見の傍に腰を掛けてゐたおきんが、疳高い声で叫び乍ら、入口に近いテーブルに彼等を導いた。彼等は、演説会の帰りと見えて、話は選挙の事ばかりであった。『全く乱暴だね』 …
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