2012-03-17から1日間の記事一覧

傾ける大地-47

四十七 茶褐色に焼けた浜の砂地が、眼を射る。思起された芋畑のひからひた蔓が、高く積まれて厭な臭気を放ってゐる。初めから理想的な所とは考へなかったが、もう少しどうにか出来ると思って、小屋を建てたものゝ、杉本英世が、占有し得た地域は、唯小屋が建…

傾ける大地-46

四十六 開票のあった翌日、カフェ東洋亭を自分の家のやうにしてゐる細見と服部は、いつものやうに日暮れ方、東洋亭に足を向けた。そしていつに似ず、二階座敷の賑やかなのに気が付いて、女給のお花に尋ねた。 『今日は何ぢゃね?』 さう云ひながら服部は、二…