神戸文学館を訪ねて 伴 武澄
賀川豊彦献身100年の神戸プロジェクト実行委員会に出席するため12月13日、神戸に行った。予定より早く着いたので、「賀川豊彦文学展」を開催している神戸文学館を訪ねた。
偶然とはよくいうもので、2週間前に近江八幡市を訪ねたときにお世話になった近江兄弟社学園の池田健夫理事長とばったり出会った。池田理事長もまた実行委員会出席のために神戸に来ていた。2週間前には文学館の義根益美(よしもと・ますみ)さんという文学館の学芸員とも出会っていた。土曜日ということで義根さんには会えないと思っていたら、義根さんもその場に出合わしたのだからゆかいだった。
神戸文学館は関西学院大学にかつてあったチャペルを現在の地に移築したものである。イギリス人が設計したが、移築にあたってはヴォーリズ設計事務所が担当したから、近江兄弟社ゆかりの建築物ともいえる。
文学館では山本幹夫館長からじっくり、神戸の文学についてレクチャーを受け、帰りに神戸文学館作成の「詩文抄 賀川豊彦」をいただいた。
義根さんは「賀川の詩ってあまり読まれていないんですよね」とぽつりと言った。
小生も「涙の二等分ぐらいでしょうか、読んだのは」と答えた。
家に帰って「詩文抄 賀川豊彦」をじっくり読んだ。なるほど学芸員の義根さんが賀川の詩や小説から選んだ「抜粋」がいくつも並んでいた。膨大な作品の中から選ばんだはずだが、賀川の全作品を読みこなした人はそういないと思う。義根さんも自分が接した作品の中から、自分の賀川像を作り上げたのだ。
義本さんは賀川の詩に着目していたのだった。「詩文抄 賀川豊彦」を読んでいて「それでいいのだ」と感じた。それぞれの賀川像がそこかしこで出現すればそれでいい。そろそろ僕も自分の賀川像を描かなければと考えている。
次は義根さんが「詩文抄 賀川豊彦」の表紙に選んだ詩である。
神戸のために
神よ
恩(めぐみ)の雨与え給え
神戸に。
ただ祈る
父よ、恩の雨を
神戸に。
(『涙の二等分』より)