製本屋の女工としての誇り 賀川ハル

 京都大学大学院の本山美春教授の『売られ続ける日本、買い漁るアメリカ』(ビジネス社、2006年3月)のあとがきに賀川ハルさんの自叙伝『女中奉公と女工生活』からの引用がある。
 製本屋の女工として勤務していた賀川はる子は、その自叙伝『女中奉公と女工生活』(復刻版が大空社から発行)の中で、製本の喜びを次のように記している。
 仕事は面白いものである。嬉しいものである。又愛すべきものである。金縁の美しいものが出来上がる時職人は最も大切に取り扱う。………金箔が付いていて一方は表紙を付けるために糊がついている。金を汚さない為汚れた糊のついて手を頭の毛で拭う。朝は綺麗に梳って来たものを仕事に懸命になると髪の毛も着物も、手拭いの代用とするほど熱中する」
「仕事に対して一つの熟練を得ると誇りが出来る。学者がその修め得て、うん奥を極めた学術を社会に発表し益するところの多くあるときに必ず誇りがあるであろう。製本工が又その書物の製作に対して、熟練の技量を自覚する時に之にも誇りがあるものである」
 職人の誇り、誇りをもった職人への畏敬、そうした感覚が社会に品格を与える。