乳と蜜の流るる郷 賀川豊彦

この書は昭和10年11月6日、東京の改造社から発行された。この年2月かた7月まで、賀川はオーストラリアに講演旅行をなし、12月には中山昌樹とともに、アメリカ・キリスト教連盟及びアメリカ政府の要請により渡米し、主として協同組合運動について指導したのであった。本書は「家の光」に昭和9年1月号から同10年12月号に至るまで24回に亙って連載されたものをまとめたものである。

協同組合運動と立体農業とを鼓吹することにおいて、本書は『幻の兵車』以上の迫力を持っており、筋の運びも変幻自在で、賀川の想像力がもっとも自由奔放に駆けまわり、目まぐるしいばかりである。47歳の時において、賀川のロマンティシズムはその絶頂に達したといいうるであろう。(武藤富男)

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