「賀川豊彦と友愛社会の未来」シンポジウムに500人参加
賀川豊彦健診100年記念事業・東京プロジェクト主催の「賀川豊彦と友愛社会の未来」と題するシンポジウムが29日、東京都港区の明治学院大学で開かれた。
国際基督教大学の最上敏樹教授が「寛容の再生のために」をテーマに基調講演し、阿部志郎神奈川県立保健福祉大学名誉学長らがそれぞれ福祉、経済、農業、宗教の立場から賀川豊彦を問い直す意味などについて問題提起した。シンポジウムには約500人の市民が参加し、壇上の意見交換に熱心に耳を傾けた。
最上教授は冷戦構造崩壊後の国際社会について、「善」と「悪」が唯一の基準となったと規定。平和を維持するために「悪」をたたくことが世界的な合意となり、かえって紛争が増えたとの認識を示した。複雑な国際社会において安易に一方的「正義」を振りかざす危険についても警鐘を鳴らした。
また欧州連合(EU)が1950年のシューマン・プラン(石炭鉄鋼共同体)という紛争地域の国際的共同管理から始まり、国境のない欧州が誕生したことについて、「世界連邦が部分的に成立可能であることを示している」と述べた。
戦後、世界連邦運動を推進した賀川とEUについて「シューマン・プランが出たことを日本で真っ先に評価したのが賀川だった。欧州の石炭と鉄の共同管理が欧州大陸に平和をもたらすと確信していた」とその先見性を評価した。(伴 武澄)