日本が維新後の近代化を40余年ひた走った… 【西日本新聞】

 日本が維新後の近代化を40余年ひた走った… 【西日本新聞・春秋】と題して西日本新聞が一面下に賀川豊彦の「ノーベル文学賞候補に関するコラムが掲載された。
 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/122741

 日本が維新後の近代化を40余年ひた走った1909(明治42)年、21歳の青年が神戸の貧民街に移り住んだ。貧しい人々のために生きようとした。
 キリスト教社会運動家として知られる賀川豊彦の若き日だった。それから100年になる。貧民救済、協同組合運動などに尽くした生涯に光を当て直す本の出版が今年は相次いだ。
 30代で書いた「死線を越えて」の復刻本も交じる。この自伝的小説は戦前400万部のベストセラーになった。賀川は幼いころ両親をなくし、孤独な少年期に洗礼を受けている。貧民街での活動は、肺結核で長くは生きられそうにないと思って決めた。 
死線を越えて」は、その後の著書ともども翻訳され、海外でも知られた。欧米では講演活動も行い、とくに北欧で高い評価を得た。ノーベル平和賞の候補になった時はシュバイツァーが支持を表明した(今春発行の季刊誌「at」15号、賀川豊彦特集、太田出版)。
 平和賞候補になったのは50年代だ。少し前の47、48年にはノーベル文学賞の候補にもなっていたことが、ノーベル財団が先日インターネット上で公開した資料で分かった。公開できる年数に達したという。 
死線を越えて」などの反響の大きさを物語る。日本人で文学賞を受賞したのは68年の川端康成、94年の大江健三郎さんの2人しかいない。職業的作家ではない人が候補になっていたことに驚く。文学って何だろう、とも思う。

 =2009/09/18付 西日本新聞朝刊=