世界国家12 ユネスコの為めに立て(1948年1、2月号)

 「平和」は仮想ではない。平和は、夢ではない。平和は、我らの憲法に、保証せられ、平和は、我らの戸口に待っている。
 然し、心の平和は、日本に、来ていない。心から、始めなければ、絶対に、平和は恒久的であり得ない。
 そのために、平和は、受胎告知の日より、棺を蔽う日まで、我らの胸底に、組込まれなければならない。
 闘争の酒に酔うた者は、平和の燻香を匂ぐ資格を持たぬ。
 平和は、揺籠の中より教えこまれなければならぬ。平和は科学に、文学に、良心に、そして芸術に戦闘的展開を持たねばならぬ、運動体系を取るもののみに実存の権利を許可される、ユネスコは、その為めに、尖鋭化せられた使命を持つ。
 凡ての智慧と、凡ての美と、凡ての善意をユネスコに、捧げよ。然らざれば、悪の力はまた、人類社会を地獄になげ込むであろう。
 ユネスコの、為めに、立て……。
 これが、日本の青年に課せられた。最大の義務である。(一九四八年一・二月号)