伴武澄が語る「甦る賀川豊彦の平和思想」(5)

 アジアにはまだそういったスラムがあります。7月にタイからスラムの天使と言われる女性が神戸で講演しました。プラティープさん。アジアのマグサイサイ賞も受賞した女性です。彼女はスラムで生まれ育ちました。貧乏だったため小学校しか出ていません。卒業後、そのスラムで当然のように働き始めました。働き始めて、世の中の理不尽なことに驚いて、教育の必要性を痛感します。自分の母親は教育熱心だったから彼女小学校を出られたが、多くの子どもたちは小学校すら出ていない。働かされる。子どもは労働力なんですね。日本で自殺が増えているという悲惨な事態がありますが、一方で、子どもが労働力のままでいるという国がまだあるということにわれわれは心に留めておかなくてはいけないんだと思います。

 彼女は16歳から自ら子どもたちのためにスラムで学校をつくります。10年ほどしたらようやくそれが公立の学校に昇格します。ということは、お金が出るということですね。認可されたということで、先生の給料も出るし、校舎も建てられる。ようやく普通の学校になりましたが、それまでは、全部自分たちでやっていたのです。

 プラティープさんは、賀川献身100年記念事業の一環として来日しました。同じ事業で3月には、バングラディッシュムハマド・ユヌスさんをお招きしました。ご存じでしょう。3年前にノーベル平和賞を取った方です。ユヌスさんは3日間、神戸大学の学生とともに議論をしました。私も3日間お付き合いし、非常に面白く勉強になりました。