アメリカの人種区分

 賀川豊彦の紀行文『世界を私の家として』は文明批評として実に面白い。ペンシルベニア州はクエーカーを生んだウイリアム・ペンが移住した地であることは知っていたし、ボストンのあるマサチューセッツ州清教徒が第一歩を踏んだ“アメリカ発祥の地”であることも有名だ。しかし20世紀のニューイングランドはもはや清教徒の土地ではなくカトリックの土地になっていたというのだ。そういえばジョン・F・ケネディの地盤はマサチューセッツだった。
 ミネソタ州スカンジナビアの人たちの開拓地でルーテル教会の支配地だったという話は興味ある。またカンザス州には第一次大戦前にドイツ人の入植者たちが大挙して押し寄せたのはなぜなのだろうと思う。そしてミシガン州がオランダの植民地でカルバン主義が盛んであるというのも不思議な話である。
 ニューヨークについて、「人口の三分の一がユダヤ人で、他の三分の一が欧洲の移民、残りの三分の一がプロテスタント系の米人だ。で、ニューヨークではプロテスタントの運動は何にも出来ないとあきらめてゐる」というような話も出てくる。
 ルイジアナ州はフランスからアメリカが買収し、カリフォルニアは元々スペインだった。そう考えると本当にアメリカは本当にヨーロッパ各国の移民で成り立っていることが分かる。この雑多な民族の集合体は国家という概念で測りがたいことが分かる一方で、アメリカの正体は一体何なのかますますわからなくなりそうだ。(伴 武澄)