闘争の世界より恒久平和の世界へ 国際平和協会機関誌「世界国家」 (一九四八年四月号)

 階級闘争を主張し、暴力革命を考えている者がある。しかし、これは社会進化の妨げである。階級闘争は事実としてこれを認めるとしても、この事実を超えた社会文化のあることも認めねばならない。それでなければ社会は退化する。階級闘争を事としたローマを見よ。往時のフランスを見よ。

 内乱を喜び、暴力を喜ぶ社会学者は憐れである。

 人口問題を云々する人の中に、今なおマルサスの説を盲信する者がある。しかし、最早、マルサス在世当時とは世界の情勢が変っていることを知らねばならない。だのにマルサス盲信者は、未発達だった当時の生物科学者を今日も正しいと考えている。
 マルサスは食物生産の限界をいっているが、空間を立体化するなら、食物は海に山に、もっと増産が可能であろう。山嶽農業を考え、立体農業を講究せよ。また移民問題にも検討を加えよ。さすれば日本の狭められた国土を以てしてなお一億の人口を養うことが出来よう。

 いわれなき少数同胞への差別感を一掃せよ。優生学を推進して、悪質遺伝や反社会性の人間の出生を防遏せよ。そして発明発見の方へ進む優良な人間の種を殖やせ。産児制限ではなく、産児調節が必要である。悪い種は減ぜねばならぬが善き種はますます増加せしめねばならぬからである。中国の道教は宦官の存在をさえ許したが、去勢術も科学的に再検討される必要があろう。

 アメリカの女子大学卒業生の六割は結婚しない。種々の理由が挙げられているが、骨の硬化などを理由とするものさえあるという。

 性間題も優生学的にまで考える要があろう。そして平和的な優秀な人間の種を殖して行くようにせねばならない。性問題が悪化すると、神経哀弱と闘争心を促進する。ホーマーの記すところによると、イリヤード戦争の因は性問題に発しているという。

 人種闘争の如き、性問題から発足する。黒人問題などもこの点に注意を要する。交通機関の発達に伴い、国境はその意味を失いつゝある。そして人種は黒白黄の色別を超えて混血し、今や世界の人種は雑種化しようとしている。かゝる時、最も注意を払わねばならぬのは性問題の立場から人種闘争を考える必要がある。

 蒙古人種のヨーロッパ浸入と混血など、考究される価値ある問題である。ハンガリーの如き蒙古人種の血が多分に混っている。成吉思汗の大軍はパミル高原を越えてヨーロッパに浸入し、ヨーロッパの諸人種と混血したのだった。土耳古民族の美しいのも、タータル人種とセミ人種の混血の結果である。階級闘争や人口闘争は事実として認めねばならぬが、社会文化はこの事実を超えて働かねばならない。政治、経済政策についても同様である。私の主張は国際連合を通じ、ユネスコに参加して教育、科学及び文化を通じ世界平和の招来に貢献し、また国際協同組合運動の展開によって世界経済の建直しを行い、世界の恒久平和を促進すべしというにある。(一九四八年四月号)