十字架意識に目ざめよ 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九五〇年十一月号)

十字架意識に目ざめよ

 此度ドイツを旅行して、最も感心したことは、ルーテル派の平信徒兄弟愛運動(ゲマインシャフト・ベウェグング)を始めとして、無料看護婦や、母の家などの愛の奉仕運動の盛んなことだった。彼らは、唯物共産主義では世界は決して救われないこと、そして、十字架意識こそ、世界平和をもたらす唯一の秘鍵であることを悟り、愛を組織化し、実践しているのである。さすがはルーテルの国である。これでこそ、ドイツの復興は疑いない。
 翻って日本は果して如何。
 闇と暴力の梅毒が横行して、愛の組織化は道遠く、依然として道徳発狂時代が、つゞいているのではないか!
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 第三次大戦を未然に防止するものは、ハッチンス博士らの世界憲法シカゴ案の基盤をなしている「汝、人にせられんと思うことを人にもせよ」の十字架意識のほかにはない。

 救わんとする神の意志を体験し、自分が全く救われて、また人を救わねばならない。そのために、一人々々が愛と奉仕の兄弟愛を実践し、これを組織化せねばならぬのだ。

 われわれ日本人は、闇と暴力と梅毒を、ことごとく駆逐して、十字架意識に基く愛を組織化するため、懸命の努力を払うべきである。

 世界平和の明星は、東雲の上から、日本の目ざめを、今や遅しと待っている。われわは、もう目をさましてよい時ではあるまい。  (一九五〇年十一月号)

国境山上の平和像

 南米アルゼンチン共和国と、チリー共和国の国境の山の上に、巨大なキリストの銅像が立っている。これは両国が、かつて国境問題について紛争をつづけたが、キリストの精神によって和解した、その記念に立てたもので、キリストが両国のために祝福せられている立像である。

 今や世界は、悲しいことに、はっきり二つに割れて、朝鮮に、仏印に、ドイツに、紛争がつづいている。朝鮮の動乱が、ようやく収まるかと思えば、仏印に紛争が移り、ベルリンもまた危機を孕んでいる。共に、侵略的共産主義者による帝国主義の戦争であることは明かだ。彼らは、共産主義の世界制覇によってのみ世界の平和がもたらされ、文明が促進するという。

 真の永久平和と絶対的平和世界の創造への道は、共産帝国主義とは全く反対の、社会連帯意識を極限にまで延長し、贖罪愛意識にまでたかめたキリスト精神の、ほかにはないのだ。

 わたしたちは、この愛の精神に基いて、世界を紛争から救い出さねばならない。そのためには、全世界の平和を祝福せられるキリストの像が、地球の中央に立てられねばならない。  (一九五〇年十二月号)