全人の自覚と世界連邦

  全人の自覚と世界連邦

 国際連盟は、ドイツとイタリーと日本の脱退で破壊せられ、ソ連の拒否権の乱用で、国際連合も半身不髄に陥っている。世界の主権国家が絶対主権をふりまわして、我がまゝを云っている間は、幾十回国際連盟を作っても、それは無効に終るであろう。

 では、世界の大衆は、世界平和を希望していないか? 居る! じゃ、なぜ戦争が起るか。無制限の国家主権が存在していて、八十四に分裂している国々の人民が、胸をひらいて話しあう機会が無いからである。

 今日は、ラジオも発達し、無線電信も進歩し、飛行機もとんでいる時代である。人為的な武力や、暴力で、国境を作ったり、階級差別を作る時代ではない。人間として、みんなで話しあいをし「戦争を無くする話合い」をすれば、わかるはずである。それが世界連邦の運動である。だから世界連邦連動は、「世界市民権」運動であるとも云える。

「それは空想だ」と云う人があれば、凡ての飛行機を空想と考え、ラジオを夢と考えたであろう! 十年前、凡ての人は原子爆弾を夢想し得なかったであろう。飛行機、ラジオ、原子爆弾のごとく、世界連邦も一つの発明である。それは社会科学上の発明である。国家主権だけの談合で世界平和が来るものなら、ワシントンの軍縮会議の時に、来ていたはずである。われらは、国際連合を進化せしめることに、少しも反対しない。しかし、国家の強権談合だけで平和は確保し難い。全人類総意の全人的自覚が必要である。その裏づけの運動が世界連邦運動である。これは広い運動であるが、また深い運動である。全人の自覚を要求し、その覚醒の上にのみ永遠不滅の世界連邦が誕生することを予期するものである。(一九五二年六月号)