ドイツの統一と世界の統一

  ドイツの統一と世界の統一

 東西ドイツの統一問題ほど、最近世界の注意を集めたものはなかった。東西ドイツの統一は、世界平和に影響するからである。

 東ドイツに於ける唯物暴力主義者の政治が甘く行かず、西ドイツに逃げてきたものが、一九四五年より、四年間に千七百万人にのぼり、その後毎年三十万以上のものが東より西に逃げ出した。そのため西ドイツの民衆は東の共産政府に信用をおかず、四年前西ドイツの議会に十四名あった共産党の代議士は全部落選してしまった。朝鮮の分割も、ドイツの分割も第三次世界戦争の種を、四大強国自らが蒔いたものを、八年後に刈取っているのである。

 結局、征服心による国連も、共産主義も、世界統一の出来ないことはこれでわかる。

 母は赤ん坊の「おむつ」を変えることを任務とする。文明はこの「おむつ文明」の進化したものである。それに逆行して、決して文明はあり得ないのだ。だから、世界国家を創造しようと思えば、母の如く、他民族、他国家の尻拭きをする世界連帯意識が全人類の間に意識化するまで世界国家は産れるものではない。ロマ帝国が滅亡し、シャレマンの神聖ロマ帝国がかいめつした如く、暴力や、武力で、一国一民族の統一ができても永遠の生命は持たぬ。いわんや、世界統一に於ておやである。

 世界連邦の運動はこの意味に於て、最上の倫理運動でなければならぬ。一階級、一強力国家が、自己の主張を貫徹させようと云うのでは、世界連邦は組織できない。国際連合を進化させて、世界連邦にする運動にしても、一点のごまかしが有ってはならない。それは世界的倫理運動でなければならぬ。  (一九五三年十月号)