人類連帯意識の教育

 人類連帯意識の教育

 世界連邦の達成は、人類連帯意識の教育を除外して絶対に不可能である。それは幼稚園教育から始めなければならない。幼稚園の創始者フレエベルは子供に蟻をさえ殺すことを禁じた。それだけの立派な教育を受けたものでも、中学校、高等学校へと進むと共に、他民族を憎むことを教えられ、他人を殺す銃剣術が教授され兵式体操が教えこまれる。歴史は戦争史を中心にして教授せられ、政治学は民族利己心と階級利己主義を至上として青年の頭脳につめこまれる。この浪費多き教育が続く間、戦争と、窮乏と、不道徳と、人類の自殺行為は人間社会につづくであろう。

 だが、人間は永久に、この下劣な感情の支配に置かる可きものではない。人間は真理と善意と美感を求める生物界の霊長である。幼い時から、人類連帯意識を教えこまれるならば、算法に熟達する如く、世界連邦の組織連営に熟達する日もやがて来るであろう。

 南米ブラジルのアマゾン河地域では「植物社会学」が成立している。一町歩平方に約二千種の植物が互助共棲して連帯社会を組立てている。チョコレートの樹は或特定の大木の蔭だけに育つものだ。濠州の東南隅バス海峡では世界各地域から季節に集る二十数種の鳥類が、大連合社会を作っている。鳥や鳥類が連合社会を作り得るものを、なぜ人類が世界連邦を造り得ないことがあろうか?

 世界連邦は、人類連帯意識を本能化し、生活化する日に達流しうるであろう。その教育に我等は精進しなければならぬ。  (一九五四年四月号)