人類の自殺か世界連邦か

  人類の自殺か世界連邦か

 全人類の自殺か? 世界連邦制による平和確保か? ビキニの水爆の実験は、その破壊力があまりに大きいので、全世界を驚かした。米国自身があまりその被害の大きいことに驚いたらしい。今だに、日本の各地に放射能の雨がふり、マグロ漁船が被害を蒙っている。

 いくら、米国が頑張っても、米国民自身がセット・ストリームによって、原子灰を浴びていることに気がつけば、原子力の実験を中止せざるを得なくなるであろう。

 然し、実験を中止するのみならず、人類を多量に殺戮する工夫はこの際断然中止して、それを平和産業におき換える必要があると思う。

 然し一方に於て平和を主張し、他方に於て原子力の悪用に力を注いでいる暴力主義者もあるから油断はならない。

 文明は最後の階段に追いつめられた。水素爆弾、コバルト爆弾、リチウム爆弾と全人類自殺の直線コースが明瞭になった以上、之を世界平和に転換さす外道は無い。ただ軍縮会議を幾回繰返そうとも世界平和は来ない。みんな心を合せて、世界各国民が「世界警察」を作る約束をする外、世界平和の道は無い。日本の維新当時三百諸侯が、領地を天皇に奉還したように、世界の八十四の絶対主権国家が、軍事、外交の部分だけ主権を制限して、世界的法治組織を作り、軍事、外交を世界政府が行うことになれば、世界に戦争はなくなるのだ。そうなれば、原子力が平和産業に使用できて、世界に貪民はなくなる。世界連邦運動こそ全人類の運命を決する急務である。  (一九五四年五月号)