世界主権制限会議を開け
世界主権制限会議を開け
今年一九五五年こそ、国連憲章改正の年である。ロシアも、マレンコフの譲歩によって「反宗教」運動を停止し、自由主義国家と協調しようと云うことに歩み寄って来た。アメリカも戦争主義による平和の維持の無効なことに気がつき出したようだ。小国家も、大国に戦争ばかりせられては、生活保障も、文化の維持も出来ないので、全く戦争主義には飽きあきしている。
実際、個人として賢い人開が、国家と云う魔物に乗り移られると怪物化し、すぐ暴力を振う。そのおそろしい精神分裂症になるのはなぜだろうか?
下等動物の間には、全く戦争を知らないものが多い。ミミズや環虫類は戦争を知らない。蛤や「アサリ」は戦争をしない。昆虫類の蠅や、蝶や、蝉が戦争をしたと云う話をきかない。脊椎動物の中でも、蛙も、鳩は戦争を必要としないし、羊や馬は戦争を避けることはしても、殺し合いはしない。人間だけが大砲をうち、原子爆弾を使用して、殺し合いをする。
戦争は人間として恥ず可きことだ。それを再軍備と称しても、一度日本文化を逆転せしめ、世界を恐怖の「ルツボ」に追いこまんとする。精神病患者の世界政治の革新に、新しき努力と精神革命を起さねばならない。欧州連邦の布石は着々と進行している。ヨーロッパの小国は次から次に、主権の制限を断行している。
この勇気を今年は国際連合憲章の改正に振うべきである。国家が絶対主権と称する発狂指導薬を持っている間は、また第三次世界戦争が起る可能性がある。だから、国家の持つ軍事外交の面に於て主権を制限し、世界政治の「主権在民」を主張し、人間としての世界政治の方向に進むならば、世界連邦はすぐ出来るのである。だから、軍縮会議を開く前に、世界主権制限会議を開く必要がある。
今年こそ国連憲章改正の為に努力しなければならない。 (一九五五年一月号)