世界平和と社会進化

  世界平和と社会進化

 一日にして、世界連邦が出来たとしても、人類の意識的組織が本質的に固つて来なければ、恒久平和はくるものでは無い。人類の意識的組織は、社会、経済、教育、芸術、倫理、文化、等の各種組織の外に、宗教の進化も大きな要素を持つ。大戦後数年間は、欧州連邦もすぐ出来るように見えたが、共産主義的侵略におびえる自由国家群が反動的になり過ぎて意識的に世界連邦を組織する運動が後退したかの感を呈している。

 だから、私は、世界連邦の運動が、手のひらをかえす如く即座に出来るものだとは考えていない。たとい、出来たにしても、人間の性質上、世代の交代する度毎に新しい平和機構を持つ工夫をせねばならぬから、組織が出来たから、それで安心して善いということはないと思う。世界連邦機構による世界平和の運動は、永久の運動である。だからのんびり構えていて善いというのではない。

 お産に時期があるように、世界連邦機構を作るに時期がある。それは世界の変革期に作らなければならない。それが、反動期になると、二、三十年遅れるが、決して、失望する必要はない。社会進化の必然的要求から、人類が、安定した社会生活を送る為めには、世界連邦機構を持つ外、人類の発展が止る。之を発見した以上、徐々であるとは云え、世界連邦の運動は、人類進化の必然的階程である。そのために、我らはあらゆる利己心を捨て、偏見と、嫉妬と、誤解と、搾取的意欲を去り、我らの目ざす理想に突進せねばならぬ。  (一九五五年十二月号)