宇宙の目的 2 水晶時計

 アンモニアの構造を研究すると、アンモニアの分子が三つの水素と一つの窒素で成立していることがわかる。さらにこの三つの水素の原子が一平面上において、正三角形を作り、一つの窒素と三角四面体を作っている。その平面を基底として窒素の原子が三角四面体の頂点に位している。三個の水素原子の距離はおのおの一六二八Åである。(1Åは1センチの1億分の1)
 水素原子と窒素原子距離は1014Åである。だから底辺と窒素の距離はおのおのの水素原子相互の距離より約614Åだけ短い。さて、この窒素原子は底辺をはさんで正負二つの方向への住復運動を規則正しく繰り返している。つまり物理的にいえば、振動しているのである。
 この振動を利用して、水晶時計に応用すると原子時計ができるわけである。

 この振動は、一秒間に二・三八七・〇一六メガサイクル(二百三十八億七千〇十六万回)の振動を最もよく吸収する。

 注意を要すべきことは選択的にアンモニアガスが二百三十八億七千〇十六万回も一秒間に振動している波動を吸収することである。おもしろいことは、この特殊な吸収作用を利用して、水晶の電気振動を正確に調節することである。水晶の薄い板を作り、これに圧力を加えると、その表面に電気が起こる。逆に電圧を珪素すなわち、水晶の薄い板に加えると水晶の板が延び縮みする。すなわち、振動を始める。これを「ピアゾ効果」といっている。結晶学でこの振動を利用したのが、水晶時計である。原子時計以外では一番正確なものである。

 まず水晶時計で振動を起こし、この波をアンモニアガスを入れた管に通すのである。するとアンモニアは一秒間に二万三千八百〇七・一六メガサイクルの振動だけを吸収する。

 この吸収された振動をさらに水晶時計に通じて、厳密に一定している振動で水晶時計の振動を調節するのである。それでも六年間に一秒くらい誤差を生じる。しかし、これを用いると光の速力も測定できるからおもしろい。

 われらが注意したいことは宇宙において、かかる厳密な物理的選択性のあることである。さらにまたこの選択性を幾つか組み合わすと、合目的性の機械を製作しうるということである。機械というものは、これを見ても明白なように、選択性の組み合せである。その組み合わせが、合目的性の世界を出生するということを忘れてはならないのである。

 選択性目的論理の進展 選択律を検討しているうちに、われらの気のつくことは、セント・ジョージがその『筋肉の研究』でいうように、目的性論理学を選択律の外に求むることの必要のないことである。また唯物論者がいうような、ヘーゲル弁証法だけでは筋肉の問題や、生命の問題の解明はできない。
 それを筋肉の収縮、弛緩の問題に限っても、筋肉論は決して弁証法によって発展してきたものではない。