黎明53 宇宙一元

   宇宙一元

 宇宙一元の真理を、今日の科学者は、物理学の実験室から説明するやうになった。カリフォルニヤ大学のローレンツ教授の発明によるサイクロトンによって、あらゆる元素を水素原子に還元することが可能になった。そしてその水素原子はエネルギーの波に関聯する。
 科学者が、かうした物的宇宙の一元を説明する前に、宇宙を良心といふ内側から覗いた人々は、宇宙一元の原理に早くから目覚めてゐた。ギリシヤの哲学者も物心二元の世界より奥深くは行けなかったが、愛の原理を知ってゐた。キリストとその流れを汲むものは、物心二元の世界をも、愛による一元によって包容し得ると考へた。まことに、愛に気のつかないものは、一元の神を認識することは出来ない。
「愛は神より出づ。凡そ愛あるものは神より生れ、神を知るなり」とヨハネ第一書の著者が云ってゐるが、キリスト的宇宙一元の認識は、論理から來ないで生活から来た。愛による生活を充実したものは、物質の世界が絶対でなく、愛による一元こそ絶対であることを認識し得たのであった。「殊に愛は神より出づ。凡そ愛あるものは神より生れ、神を知るなり」といふことは、キリスト者のみが発見し得る特権であると思ふ。