予言者エレミヤ7

  六 ひとりぽっち

 一人でもお友達於欲しいと思つで居るこの淋しい迫害の時に、神
様はまた
『エレミヤよ、お前は、こゝで妻を娶ってはならない』と仰せられ
ました。
 勿論エレミヤは信仰の厚い青年でありましたから、之がつらい悲
しいとは申しませんでした。
 然しエレミヤも、もう血の湧き立つ三十近い青年です。それでな
いにしても預言者だとて妻を娶はれぬことはないのです。エレミヤの前の豪い預言者だとて皆妻を娶って居りました。イザyだってホゼヤだって、妻がありました。同じエレミヤの預言者名かなd¥にだって大抵は妻があります。
 で、エレミヤは、神様のお言葉には何か理由があるに違ゐないと思ったのであります。それで、之れを神様に御伺ひいたしました。
 神様はすぐお答へになりました。
『もう審判の日が近い。その時には親とか子とか新郎とか新婦とか云って居れない。皆、亡ぼされてしまうのだから』と。
 かうおきゝ申したエレミヤは、お尋ねがお祈に変り
「あゝその時の恃み、また逃れ場」と祈り出したのであります。
 そう祈って居る中にも、その恐ろしい終末の日の光景が眼の前に見えます。
『人の罪と云ふ罪はみんな見透され、神様が人の心の奥の底まで御覧なさる。そして調度漁師や猟人が鉱物を取る様に人間が漁ら
れ猟られて亡び失せる」』
 神様に此光景のおしめしを受けるとエレミヤはまた預言に出かけました。
 すると祭司のハパクックも王の血統をひいて居るゼパニアも自分がおしめしを受けたことゝ同じ様なことを預言して居るのであります。(ハバクック一・一五、ゼバニア三・八)
 それでエレミヤは益々己れに神様、がお黙示なされたことは真違が無いと信じました。