2012-02-27から1日間の記事一覧

傾ける大地-13

十三 それから三日後に町会がまた開かれた。そしてその席上、公民派の一派は雑作もなく、加納町長に対する不信任案を決議して仕舞った。その一つの理由は町会で決議された事項を、未だに県庁に通達もしてないと云ふことが最大の理由であった。 然しそれに対…

傾ける大地-12

十二 その日の昼過、斎藤は一味徒党を全部若竹楼に集めた。妾の里見市子は薄っぺらな唇を開いて彼を歓迎した。公民会の殆んど全部が集って来た。即ち、骨董屋の伊藤、呉服屋の樋口、醤油屋の花井、酒屋の村上、家具商の滝村、肥料屋の富田、時計屋の桜内、保…

傾ける大地-11

十一 土肥家にごたごたがあった昼頃、黒衣会の面々は打揃うて町会議員に辞職制告の決議文を突つける為に戸別訪問をして廻った。第一に訪問した家は西洋雑貨商の斎藤新吉の家だったが、斎藤は酒々としてその決議文を受取ることを断った。その次に伊藤唯三郎の…