與謝野晶子の賀川豊彦素描 1/7


 與謝野晶子(一八七八[明治十一]年〜一九四二[昭和十五]年)は、近代日本の歌壇を代表する女流歌人として実に多くの作品を世に送り出している。歌の世界に疎い人びとの間でも、彼女の「君死にたまふこと勿れ」はよく知られている。しかし、今日、晶子が優れた文筆家として多くの鋭い評論、特に社会評論を執筆したことはあまり知られていないのではないだろうか。彼女は広く社会的関心をもち、政治、平和、教育、貧困、ジェンダーなどの問題に鋭く切り込んでいる。
 このような晶子が、年齢的には十歳若い賀川豊彦(一八八八[明治二一]〜一九六〇[昭和三五]年))が社会活動家として、また作家、詩人として世に出るにおよんで、彼の思想や生き方に深く共感し、さらに、人間賀川にも敬愛の念をもったことは、首肯できる。彼女には賀川豊彦をうたったつぎのような詩がある。

 続きを読む