日本人は草を喰え 大田俊雄

 池田勇人氏は戦後「貧乏人は麦飯を喰え」といって大いに非難された。賀川先生は戦前に「日本人は草を喰え」と力説してこられた。このことを次のように語られたことがある。
「日本のようにやせた、狭い土地にたくさんの人間がウヨウヨしていて、食糧難だ、食糧難だとさわいでいても仕様がない。もう少し賢くおなりなさい、と言うんです。海にも山にも、こんなに豊富な海の幸、山の幸があるではありませんか、食糧に還元できる物がいくらでもある。草を食糧にすればいい、と僕は言いつづけてきたんです」
「山羊を飼い、牛を飼い、兎を飼い、羊を飼う。草がおいしくて滋養分のたっぷりあるお乳になって出て来る。人間はそれをいただけ、と云うのに言うことをきかないで、いよいよ戦争になって、たべるものがほんとうに足りなくなると、急にあわてて、喰ったね喰ったね、草をもりもり喰ったね! そしてみんなで胃腸をこわした! 人間の胃腸は雑草を喰って完全に消化できるほど丈夫にはできていないんですよ。僕が、草を喰えといったのはね、直接喰えといったのではないんですよ。牛さんや山羊さんに協力してもらえば、草が我々の立派な滋養分になる、といったんですよ。・・・」(『神は我が牧者』から転載)