醸成しつつある協同組合再評価の環境 日生協総会

 日本生活協同組合連合会の年次総会が6月18日、品川のパシフィックホテルで開かれた。賀川豊彦献身100年とあって、会場のロビーには賀川豊彦パネルが展示され、書籍販売コーナーには復刻された『死線を越えて』『空中征服』『一粒の麦』に加えて、コープ出版から翻訳刊行されたばかりの『友愛の政治経済学』など賀川関連の書籍が山積みとなり、コーナーは賀川一色だった。

 冒頭あいさつに立った山下俊史会長は昨年のギョーザ事件などを踏まえて生協の信頼回復が重要であることを述べた後、献身100年に触れ、刊行されたばかりの『友愛の政治経済学』をかざして、賀川イズムの再認識が必要との認識を示した。また、来賓のJA全中の茂木守会長はあいさつ(代読)の中で「米国発の金融危機から始まった世界的経済低迷を受け、協同組合理念に基づいた事業活動が再評価される環境が醸成されつつある」と述べた。
 以下、山下俊史会長のあいさつ
 賀川豊彦貢献100年を重ねて、私たちはこの間、賀川の実践の跡を追い、その思想に学んできた。今日の総会に間に合うように『友愛の政治経済学』という本を出版したことを大変嬉しく思う。この本は大恐慌の少し後の1936年に英語で出版された。実に73年の年を経て初めて日本語で読むことができるようになった。執筆にあたっての賀川の立場はキリスト教協同組合主義であろうと思う。この本でいう「友愛」は賀川の救貧活動や防貧活動などを経て形成された人間と人格を大事にする隣人同士の相互扶助の精神の表現であろうと思う。この本に展開されているのは賀川が説いてやまなかった「愛と協同」、あるいは「一人は万人のために万人は一人のために」といった理念の普遍化であり、これに基づく社会体制をも展望する体系化であったと受け止めている。
 このような賀川の価値や理念に照らしてみると、われわれが進めてきた改正生協法による社会的役割や消費者庁設置を求めてきた消費者力とそれを踏まえた自助と共助の消費者重視の社会づくりといった考え方はその心情の一端を担うものとして再認識をされるであろう。
 生協の21世紀理念は自立した市民の協同の力で、人間らしい暮らしの創造と持続可能な社会の実現をうたってきた。いわば出直しによる信頼回復と危機突破とを同時並行でこの理念に基づく具体化に着手しなければならない。