賀川、オバマ、鳩山にみるコペ転(続)

中野 ワシントンに住んでいた時のことですが、ワシントン大聖堂に日本人として唯一、賀川豊彦の像がありました。世界的にすごいですね。賀川という人は。
 ロサンゼルスにはカガワ・ストリートもあります。アメリカはキリスト教の国ですから、ことあるごとに過去の聖人たちを顕彰するんですね。各国に「セント何々」ってそれぞれありでしょ。日本だったら空海とか最澄にあたるのでしょう。そういうエライ人たちを一堂に集めたのがワシントン大聖堂です。アメリカがエライのは外国の聖人もまつるところです。
中野 今、賀川豊彦が注目される理由として戦争と平和ということがあります。第二次大戦の後に平和を提唱する人物がクローズアップされたり、今回、ブッシュ政権の後に平和への欲求がすごく強くて、そして世界の流れが東アジアに集まって東アジア共同体とか、環境とか核撲滅とか友愛とか、いままで考えられなかったことがどんどん出てきて、それから今まで非現実的と言われてきたことが一歩一歩、確実にベクトルが動いている。なんかわくわくする時代が来ているように思うのです。
 特に鳩山政権以降、毎日、新聞を見るのが楽しみなんです。「あっ」という出来事がたくさんありますね。八ツ場ダムをやめるなどはマニフェストに入っていましたけど、行政刷新会議の事務局長に加藤秀樹さんがなるとかありますね。加藤さんは元々公務員だったのですが飛び出して、シンクタンク構想日本を引っ提げて民間の立場から政策提言をしてきました。ここ数年は仕事の見直しといって、外部から言ってもらわないと止められない仕事を探すことをやってきました。今までならありえない人材を民主党は登用している。自民党時代は雑誌や新聞で著名になった学者やシンクタンクの研究員とかが登用されることはありましたが、政府と逆の立場にいる人が今回登用されている。
中野 それは健全なリベラルで、振り子が逆にゆれている。官僚が自分たちだけのためにやってきた。年越し派遣村とかね。
 そうそう湯浅誠さんも登用された。コペルニクス的転換というのはまさにこういうことをいうのですよ。思いも寄らないことがこれからも起きてくるのだと思います。わくわく感はまだしばらく続くはずです。
中野 昨日朝のみのもんたの番組に片山元鳥取県知事が出ていて、オリンピックを広島と長崎と共同で招聘しようというニュースについて広島県知事が知らなかったと伝えられましたが、片山さんは知事が知らなかったことがすごいこと、知事と市民が同じ時に知ったのだと言っていました。これが新しい発想でいいことやというのです。さすがだなと思いました。
 なかなか炯眼だと思いますね。
中野 東京より、広島、長崎の方が可能性があるというのは、オバマ大統領のバックアップがあったり、核廃絶があるからなのでしょう。2020年といえば、鳩山さんが言った温室効果ガスの20%削減も2020年ですね、その年は日本のソフトパワーを思い切り発揮できるタイミングという感じがする。
 20年前、10年前を考えればいいのです。当時は想像もできないような時代になっているのですから。ドッグイヤーは続くのでしょうが、鳩山さんは思っていることをどんどん言えばいい、そうしたら将来に夢をつなぐことになるのです。例えば、太陽電池です。原子力政策に毎年1兆円とかいうお金を使っているわけです。そのお金で太陽電池を買えば、30万戸の屋根でクリーンエネルギーが発生します。30万もつくれば価格は半減する。ということは50万戸ぐらいは簡単に建てられる。毎年ですよ。行き詰まっている原子力政策よりずっとましだし、20%目標も現実に近づくのです。
日本の業界にとってもすごいことなんですよ。エネルギーがない国だと言われていたのが、一気にエネルギー輸出国になれる可能性もある。
中野 鳩山さんが国連で日の丸をだして、これは太陽光のイメージだといえば迫力があったでしょうにね。
 これは大したお金がかかるわけではない。子ども手当なんて何兆円もかかるのです。こんな夢のある話をどうしてしないのか昔から思っているのです。
中野 今朝のテレビで、中国のメーカーがソーラー携帯を安くでつくったというニュースをやっていました。アフリカでよく売れているというのです。これからはこういうように分散型のエネルギー基地が生まれる。
 それはバングラデシュでもモンゴルでも始まっていることなのです。
中野 ひょっとすると途上国の方がそういうことが速いかもしれません。先進国は旧世代のインフラがあってなかなか新しいことができないですね。
 しがらみですね。
中野 しがらみが切れた民主党はなかなかおもしろい。マスコミというのはどうでしょう。民主党のことをけっこう批判し続けています。
 そうなんです。マスコミが最後の開国を求められるセクションかもしれません。
中野 伴さんはかつて京都にも住んでおられてどうですか。今日もすでに高桐院に行ってこられたとか?
 あそこは大好きで50回以行っていますが、最近、苔の質が悪くなっています。ああいう古いものを大切にする心も必要なんです。捨てていい物、捨ててはいけない物を知る人を賢人というそうです。
中野 賀川豊彦は賢人ですね。今日はスタジオにきてくださってありがとうございます。(終わり)