パワフルな270歳、3賢人鼎談

 ポートピアホールでの記念式典では、日野原重明先生の講演に引き続き、今井鎮雄神戸プロジェクト実行委員長、野尻武敏神戸大学名誉教授を加えた鼎談「賀川豊彦の何を継承し発展させるか」が始まった。

 85歳の野尻先生が「最若手の僕から」と話し始めると会場は大爆笑。日野原98歳、今井89歳。三人の年齢を合計すると272歳。鼎談の年齢合計ではギネスブック入りは確実。人類史上たぶんかつてない3人のパワフルな鼎談となった。272年前はアメリカ合衆国フランス革命もまだ起きていない。人類は電気はおろか蒸気機関も持っていない。そう考えるとすごい年輪を遷しだす鼎談だったのだ。
 今井さんが「賀川の『愛の行動』をわれわれがどう取るのかが問われている」と問題提起し、野尻先生は「心の通い合い、つまり愛を広げることが日本のため、世界のために大切だ」と応じた。
 3人ともそれぞれが論客で、話し出すと止まらない。1時間の鼎談がどのように展開するのか関心がもたれた。
 日野原先生が講演で話した「賀川は米国留学でリベラル・アーツ(一般教養)を教わったことが、その後の多面的な活動に大きく影響した」という話が印象的だった。本来、学問はリベラル・アーツが基礎にあって、社会科学や自然科学のそれぞれの分野が研究されなければならないのに、日本ではリベラル・アーツ抜きで専門分野に入っていくため、研究対象に深みが生まれない。
 このところ注目を集めている公共哲学もリベラル・アーツに近い学問領域で、歴史的に学問が哲学から細分化される以前の領域の広さと深さを求めているといえるのではないか。
 3人の鼎談は医療から経済に至る幅広い話題が提供され、いま賀川の哲学や行動が見直され、新たな発展を迎えるときが来ているのだと感じさせる充実した時空間を提供していただいた。3人の賢人に感謝したい。(伴 武澄)
 【写真】上から今井鎮雄氏、日野原重明氏、野尻武敏氏