32 「真理の坑道」(1948年10月号)

 真理の坑道の掘索に けさも 午前四時に起き上つたよ。
 無理をして 無理が通らず 十年の克己なくして 真理の鉱脈を掘りあてることはできない。
 あゝ 真理は 自制するもののみに組する。
 急いで追いつかず 求めずして得られざる真理は 娼婦の如く求めざるに来訪するものではない。五十年の努力に尚足らず尋ねてやまざるその求道の心――その求むる心にこそ 神は生き給う。
 真理は 安逸をむさぼるものには 姿を現わさない 闇に 迷宮に 気力を失わず 掘り下げて行くものにのみ その秘密を打ちあける。
 私は こつこつと 朝早くから起きて また真理の坑道を 掘り下げて行くのだ!(一九四八年十二月号)