2014-12-26から1日間の記事一覧

黎明21 支那に於ける太平天国運動

支那に於ける太平天国運動 洪秀全の夢 私は東洋に於けるキリストの使命を考へるにあたって、支那の太平天国運動とキリスト教との関係を少し検べてみたい。 今から約百年前、支那に阿片戦争が起った。支那はわれわれの知る如く、三つの河から成り立ってゐる。…

黎明20 『良人の自白』の感想

『良人の自白』の感想 日本がロシアに勝って後、青年の多くはロシアの思想に傾いた。しかしその頃、日本の土から生えた一種の郷土文学ともいふべきものが、藤村やその他の人々によって試みられた。その頃はまた、小栗風葉や真山青果が女学生情緒を濃厚に描か…

黎明19 『死線を越えて』を書いた動機

『死線を越えて』を書いた動機 H様―― 『死線を越えて』を書いた動機を話せとの御言葉ですが、困ってしまひました。明治四十年の五月だったと思ひます――さうです。もう丁度二十年も前になりますね、私が肺病で明石の病院から三河蒲郡の漁師の離れに移った頃…

黎明18 現代人と信仰

現代人と信仰 神に孕まれたるもの あんまり馴れ易いわれわれの心は、宇宙の驚異に驚かなくなってしまふ。そして宇宙の可能性に対する信仰よりか、決定的の運命観が人を支配する。彼等は貝殼にはひって天が見えないといふ。天がないのではない。天を見ないの…

黎明17 民衆芸術に就いて

民衆芸術に就いて 勿論私は、トルストイの云ふやうに、民衆的のものでなければ芸術でないとは考へてゐません。しかし、ある芸術家のやうに、民衆の解しないものでなければ、芸術でないと考へるやうな、一人よがりの議論も変だと思ひます。 民衆に解るから下…

黎明16 静思断片

静思断片 私は次の世界に移った行先づ神に、自然があまりに不思議に造られてゐること、私がそれを見ていつも驚いたことを報告しようと思ふ。 放浪四年、私は日本の隅から隅まで歩いた。そして人間の住む世界が、自然に比べてあまりに平凡なのに驚いた。 慌て…