2012-01-01から1年間の記事一覧

世界国家と警察制度 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年九月号)

世界国家の創設 日本は新憲法の前文とその第九条とにおいて、戦争を放棄して平和国家の建設を宣言した。戦争放棄を宣言したのは、文明国としては三度目である。第一回はちようど百年前の一八四八年二月にフランスが行い、第二回はスペイン共和国が国際連盟の…

完全なる愛 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年九月号)

キリストは、我儘な道を歩まず、疲れを知らぬ人間として歩いた。しかも、人間として自分の意識を目醒めさせて、神の如く歩いた。人間の中に神の力が帰ってきて、その証明にならなければ宗教は役に立たぬ。 キリストは孔子や釈迦とも違って、完全なる愛を実現…

神と永遠の道を撰べ 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年七月号)

神と永遠の道を撰べ ――暴力主義と唯物主義を排す―― 闘争主義を排す 天地宇宙の理法は、ニーチェ、トライチュ、スチルネル等が唱導し日本の軍閥が考えた「闘争が宇宙を進化せしめる」というようなものではない。その反対だ。互助が巧く行けば行くほど、進化は…

ビタミン及びホルモンと撰択性 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年七月号)

更に血液に含まれている元素の問題、或いはビタミン・ホルモンの問題を考えるとき、我々の想像もつかぬ程霊妙な撰択性が血液の中に働いている事を知るのである。血液に含まれている砒素は、卵子が八百匁の赤坊にまで大きくなるためには必要なのであるが、妊…

科学と宗教の調和 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年六月号)

古代エヂプトでは、科学と宗教は完全に調和していたが、近代における自然科学の進歩により、科学と宗教が分離するに至った。哲学者カントは純粋理性批判において一旦、科学と宗教とを分離させたが、実践理性批判では、彼の形式的合目的論において、も一度科…

潮時を忘るな 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年七月号)

キリストは「時」を行動に対する大切な要素として、いつも計算に入れられた。 舟には潮待ちと云うものがある。逆潮では、瀬戸内海でも、朝鮮の仁川でも、九州の有明湾でも、巡航の出来ない場合がある。キリストすら、エルサレム行に「時」を待ち合せられた。…

無 言 賦 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年六月号)

無事なる時、無難なる時、多難を知り、多事を予則し、 悠々天と共に黙し、梢の如く、天に向つて呼吸することも神韻の福音である。 天は語らずしてよく語り、大地は黙々として行動する。 母胎に成長する胎児は成長することを知りて語ることを知らず、 ピラト…

闘争の世界より恒久平和の世界へ 国際平和協会機関誌「世界国家」 (一九四八年四月号)

階級闘争を主張し、暴力革命を考えている者がある。しかし、これは社会進化の妨げである。階級闘争は事実としてこれを認めるとしても、この事実を超えた社会文化のあることも認めねばならない。それでなければ社会は退化する。階級闘争を事としたローマを見…

春の巣立ち 国際平和協会機関誌「世界国家」 (一九四八年四月号)

雪は 水滴に更衣して 五色の礼装に 自ら包み 葉より葉を伝う 雨垂は 雪の変装に柏子をとる 朝日は 春を呼び醒し 森は忽ちにして 息をふき返した 小鳥は 梢に燥ぎ 陽炎は春の復活に先躯して 天上に駆け上る 武蔵野の 午前九時 燦々たる太陽は 真白き雪の画布…

性による死の到着 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年四月号)

生存競争を経ずして、「性」というものが、先に地球に到着した。性が複合的進化をもって、あらゆる条件、客観的環境に適応しつゝ進化発展しようという目的を持ちはじめてから、地球の形相が違って来た。上へ上へと複合進化しようとすると、地球の上に原点が…

生存競争に就いての一考察 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年三月号)

――世界苦とその救済―― 生、病、老、死 生、病。老、死、この四つの苦しみを印度の釈迦牟尼は無明の本質と考え、王宮を捨て、仏陀枷耶の六年間の隠遁生活をはじめた。今日世界で、一番問題にしている事はやはり、同じ四つの苦しみであろうと思われる。即ち、…

平和政策としての教育 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年三月号)

太陽を射るもの 昔、台湾には二つの太陽が輝いていた。台湾の熱いのはそのためであった。一人の理想に燃えた男が、この二つの太陽の、せめて一つでも射落して台湾を焦熱地獄から救い出さうと思い立ち、弓矢を背にして太陽に向って進んだ。多くの年月は経過し…

祈なくして創造なし 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年三月号)

唇を開かない児に、乳を与えることは出来ない。食慾の無い病者に滋養分を補給することは出来ぬ。 求むるものにのみ与えられ、尋ぬるものにのみ発見されるということは永遠の真理である。成長せんとするものは要求を持つ。目的を持つものは発見を急がねばなら…

人類の運命と平和への道国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年三月号)

――戦闘的平和運動の展開―― 一九〇七年ノーベル賞をもらったルコント・ドノイの「人類の運命」によると、宇宙進化は、ほとんどその方向を決定している。混雑し混沌とした中から良心生活へまで発展している。人間社会には戦争もいく度かあり、性欲方面の失敗も…

ユネスコの為めに立て 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年一・二月号)

「平和」は仮想ではない。平和は、夢ではない。平和は、我らの憲法に、保証せられ、平和は、我らの戸口に待っている。 然し、心の平和は、日本に、来ていない。心から、始めなければ、絶対に、平和は恒久的であり得ない。 そのために、平和は、受胎告知の日…

北斗星のまたゝき 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年一・二月号)

北天に秋北斗は瞬くゝ! 千億年の歴史を笑て、彼はひとり瞬く。地軸は西に傾き、東に北に、二十三年度半の傾斜に、さらに十七度を加えて、振動する。その周期二万六千七百年! 堯も告げず、禹も周も未覚のまゝに過ぎ行く。 宇宙の壮大は蔽うべくもなく、天空…

二十世紀にも奇蹟は起る 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年一・二月号)

――平和の可能性―― 獅子は牛の如く藁を喰い、幼児は毒蛇の洞に戯るとも害われることなき世界を昔の予言者は夢みた。 生存競争による進化論を提唱したチヤルス・ダアヴヰンの甥サー・フランシス・ガルトンは「人間機能の研究」においてかくの如き空想が現実と…

敵を愛する精神 国際平和協会機関誌(一九四七年十一月号)

敵を愛する精神 愛国心だけでは足りない ロンドンの大英美術館の東側に一つの銅像がたっている。背面は十字架。前面は、イギリス兵でない他国の軍装をした負傷兵をやさしく掻い抱いている一人の看護婦の像。そして像の台石には「愛国心だけでは足りない」と…

発見 国際平和協会機関誌「世界国家」 (1947年11月号)

私は飛行機を 発明できません しかし 今朝私は おそろしいものを 発見しました。――いや 発明といったが 善いでせう。 銀、金、銅、鉛色―― 恐ろしく 光る 私の衣服の縞柄―― 汚れた衣服の 私はその瞬間 縞柄とは 信じませんでした。 神の家の窓と思ひました。 …

キリス卜と「涙」と私の問答 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四七年九月号)

私「盲目の日本の盲目の指導者、私は監房に閉ぢ込められて、日本 の落ちて行く将来が心配になる」 私がそう云って、独言を云っていると、目頭の涙が小さい声でさ さやいた。 涙「実際、日本はだめですよ。すべてに行きづまってゐる日本に希 望なんて持てるも…

世界平和と無傷害愛運動 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四七年九月号)

マルチン・ルーテルが、宗教改革を始めた頃、ライン川の上流スヰスのツーリッヒに山上の垂訓を実行せんとするヤコブフッテルの一団が、無傷害愛運動を始めた。又ライン川の下流に於て、シモン、メノールが同じ頃、無傷害運動を始めた。この時代、マルチん・…

経済民主とキリスト精神 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四七年三・四月号)

一 一八七一年、普仏戦年後疲弊した独乙を救わんとして、一士官ライファイゼンが、自分の住んでゐる町、ライン河の畔たるハムデスブルゲに一つの協同組合を作った。これが農業協同組合の始めであって当時英国マンチェスターにあったロッチデール消費組合とは…

キリストに似る者 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四七年二月号)

キリストに似る者 「我らは他の使徒たち・・・の如く、妹姉たる妻を携うる権なきか」と云ってゐる。当時。イエスの弟子達は伝道旅行に妻も一緒につれて行ったらしい。パウロは妻君でもかまわないぢゃないかとパウロ我等はみな面覆なくして、鏡に映るごとく主…

世界国家聯邦への構想 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四七年二月号)

世界国家聯邦への構想 ――最高の道徳を基礎とした地区聯邦案―― 平和を基礎とする世界国家と云うものは、冗談事や、ごまかしや、不公平や、非科学的な方法で来るものではない。少しでもキリストが教えるような高き道徳から離れるならば、それは全く望みのない…

宇宙修繕の原理 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四七年一月号)

子供の時は創造を理解しうる。しかし保存の工夫も知らなければ、修繕の原理も理解出来ない。娘になっても人形の保存の工夫や、衣裳の保存に苦心する。しかし、母になってはじめて、子らのために靴下を修繕し、おむつを洗濯する苦心がわかる。 人類の意識生活…

国際平和の精神的基底 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四七年一月号)

国際平和協会機関誌「世界国家」(改題「世界連邦」)に掲載された賀川豊彦のコラムのテキスト化が終わりました。本日から連載します。国際平和の精神的基底 生存競争の哲学と国際平和 国際平和の機機に貢献する政治的、社会的、経済的条件は、根本的であら…

学芸員の杉浦さんのブログから拝借しました。 http://kagawa100.blog.shinobi.jp/ 上の写真は昭和47年6月1日付の『世連ひろば』という、世界連邦運動の団体から発行された機関紙である。この中に、面白い記事があったので紹介しよう。>>>>>>>>>>>…

明治学院大学のちょっといい話

伊丹謙太郎からのメールがありました。冒頭部分を無断転載させてもらいます。本日たまたま明治学院大学の創立150周年記念事業のHPに遭遇し閲覧しました。 http://mg150.jp/index.html いきなり,「Do for Others」というフラッシュが流れます。

賀川督明さんのちょっといい話

いま、私がいろいろなところに呼びかけているのは「11えん募金」の運動です。11えんの募金によって被災地とのご縁を紡いでいく取り組みで、「11」は、3・11はもちろん、アメリカ同時多発テロ事件の9・11、それにハイチ震災の1・12や阪神淡路大震災の1・17…

傾ける大地-49

四九 十一月の末に彼は、南米に行く準崎をしてゐた。然し彼の父は『俊子の結婚式が十二月の初にあるから、それを済ましてから行くやうにしろ』 と勧めた。従順な彼は、父の云ふ通りに従った。それに彼はまた俊子の結婚をも祝福したかった。二見町から来る俊…