2012-01-01から1年間の記事一覧

集団保障の進化と世界連邦

集団保障の進化と世界連邦 屈折、歪曲はあっても、とにかく、世界における集団保障の範囲が拡大しつゝ、進化していることは否定できない事実である。むかし一国の領土は、一日の旅行の範囲によると云われたが、馬や人間の走る範囲は限定されていた。それが、…

安全保障と世界警察

安全保障と世界警察 軍隊と警察の差は、裁判過程を経るか否かにある。軍隊は秘密に行動し、警察は公然と行動する。軍隊は攻撃を意味することがあり、警察は防衛のみを意味する。両者とも強権を使用するが、軍隊は、人格社会の連帯的意識を背景として持たず、…

世界連邦と教育社会主義

世界連邦と教育社会主義 マルクスは「万国の労働者よ団結せよ」と云う。そして、レニンはマルクスの云う階級国家は暴力のほかに建設できないと考えた。そして独裁国家の必要性をとき、ついに、ロマ帝国主義への逆転が、マルクスよりヒットラーにいたる現代政…

主権の制限と世界国家

主権の制限と世界国家 フランスとイタリーは、その新憲法に、主権を制限して、世界連邦国家に参加すべきことを用意している。世界の諸国家――アメリカも、ロシアも、これにならい、その主権を制限して、軍事と外交に関する限り、これを世界連邦に委譲すること…

シューマン・プランの教うるもの

世界の危機とその救 ――シューマン・プランの教うるもの―― 鉄と石炭の宝庫 第一次世界大戦の結果、ドイツは鉄と石炭の宝庫=アルザスローレンを、フランスに割譲しなければならなくなったが、その後、人民一般投票によって同地方は独立国家を作ることゝなり、…

征服国家と好意連邦

征服国家と好意連邦 世界歴史を貫く一つの真理は、暴力によって、かつて世界国家が成立し得なかったことである。それにかかわらず、レニン、スターリン、毛沢東は、暴力によって、世界国家が出来ると思うている。 自主自営の国家組織は、互助犠牲の精神を憲…

ケアの贈りもの 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九五一年一月号)

ケアの贈りもの きのうの敵国日本国へ、アメリカから贈られたケア物資が、昭和二十三年七月以降、今日までに十万個、約百万ドル(三億六千万円)に達したと聞いて、いかなる日本人も、感謝しないではいられないであろう。これは「敵を愛せよ」といわれたキリ…

飛行機文明の時代国際平和協会機関誌「世界国家」(一九五一年一月号)

飛行機文明の時代 ――国境争いは鳥が笑おう―― 人間は、なぜ戦争をするのだろう。なぜ人間同志、相愛しないのだろう。まるで蝸牛角上の争いではないか。この態度を改めねば、人類の滅亡する日も近いであろう。 わたしは欧州の空を、太西洋の空を、そして今、ア…

十字架意識に目ざめよ 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九五〇年十一月号)

十字架意識に目ざめよ 此度ドイツを旅行して、最も感心したことは、ルーテル派の平信徒兄弟愛運動(ゲマインシャフト・ベウェグング)を始めとして、無料看護婦や、母の家などの愛の奉仕運動の盛んなことだった。彼らは、唯物共産主義では世界は決して救われ…

平和へのたたかい 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九五〇年六月号)

平和へのたたかい ライン河畔をケルンからボンまで走り、ゴテスボルグの丘の上にある大統領官舎で、ホイス西独大統領と会って、聞きえたことの一つは、この国において共産党が、だんだん勢力を失っておることである。このことは東ドイツでも同じであり、「も…

社会科学の進歩と世界連邦 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九五〇年一月号)

社会科学の進歩と世界連邦 世界連邦運動に、三つの大きな反対論がある。第一は哲学的反対論である。主として生存競争の哲学より平和運動に反対する。第二は感情的反対論である。人間の努力で世界平和は来ない、神のみが平和を与え得るものとして、世界の終末…

日本新憲法再改正の必要性 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年十一月号)

日本新憲法再改正の必要性 新しく出来た西ドイツ連邦共和国は初めから世界連邦加入の目的を以つて、軍事、外交に関する限り主権の一部を削ることを規定してゐる。フランス新憲法も、またイタリアの新憲法も同一のことをその憲法に規定し、主権の一部を削り、…

世界連邦国家の発明 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年九月号)

世界連邦国家の発明 自然科学が発達する程度に於いて、社会科学が発達するならば、世界の戦争も流血革命も、ないはずである。レニンは、暴力の組織化を国家と云っている。そして、レニンに追従するものが多い。然し私は、暴力の組織化を社会科学と云う事を、…

日本の将来と基督精神 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年六・七月号)

日本の将来と基督精神 ――日本の基督教よ! 何処へ行く?―― ユダヤ民族の宗教的精神 ユダヤ民族の歴史は、奴隷解放から始まっておる。その解放は、武力や権力による闘争でなく、神の守護と指導とを信じて、民族全体が砂漠に逃げこんだのである。彼らはやがて…

共産主義と基督精神国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年六・七月号)

共産主義と基督精神 マルクス経済病理学 マルクスの資本論の解剖は、経済病理学としては、正しいものである。然し、それは社会病治療学でもなければ、社会政策学では勿論ない。それを社会治療学と考えたり、社会政策学と考えたところに、一種のヒステリアが…

平和なくして文化なし 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年六・七月号)

平和なくして文化なし ――文化創造の基盤としての平和―― 文化の条件としての平和 文化の創造は平和を条件とする。戦争に使うエネルギーを、平和の創造に使用しなければ、文化の発展は絶対にない。だが、世界秩序が維持されるために、相当大きな意識の目醒め、…

ヴェニスの石の精神 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年六・七月号)

マルクスは機械が発展し始めた時代に、驚いた余り、歴史を決定的に考えて、「凡ての文明文化は、その時代の唯物的生産の形式によって主として決定せられる」と論じた。それが彼の有名な唯物史観である。この立場は唯心主義に立つ者とは、正反対の立場であっ…

文明批評家ラスキンの回顧 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年五月号)

――彼の唯心的経済史観に学ぶ―ー 自然の奥に神の黙示 一九四九年一月二十日は、十九世紀の三大予言者の一人と称せられたジョン・ラスキンの五十年記念日であった。唯物共産主義の盛んに唱えられる今日、精神主義的社会主義者であった彼を回顧することは無駄で…

産児調節論 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年五月号)

善種は増殖せよ 社会改造は、単なる制度の改造を意味しない。それは人間の改造を意味して居る。人間を改造せずして社会の改造はあり得ない。不幸にして人間改造は一代ではできない。道徳や、宗教は、人間の霊的方面を改造し得るが、肉体的方面は数代を経ての…

世界平和の創造 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年五月号)

世界平和の創造 ――ライオン飼育と人類の平和教育 世界が二つの陣営に分裂し、ソ聯とアメリカが将に第三次世界戦争を起すのではないかと案じられている。 一体世界平和機構を創造し、発見する道はないだろうか。私は断じてあると云う。雷が電燈となり、狼が犬…

世界平和への道 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年三月号)

――国際協同運動を促進せよ―― 古代の戦争は、主として宗教の名により或は異民族間の闘争乃至は単に征服慾の満足のために為された戦いかの何れかであったが、現代に於ける戦争の起因は殆んど凡てが経済問題から発足している。同様に、現代ではその平和の解決策…

生存競争に現われた宇宙目的 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年二月号)

――苦痛の進化と効用―― 猫が鼠を食い、羊をライオンが食う、こうした見るに堪えないような生存競争が、どうして愛なる神の支配する宇宙において、あり得るのだろうか。釈迦は生、病、老、死、の四苦を見て、人生を悲観したというが、我々もこうした宇宙悪を否…

家庭の科学化ヘ! 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年二月号)

或る青年がブラジルから帰って来て私に云うには「ブラジルはもう飽き飽きした、何しろ彼地は人間並のものを喰っていない。馬の喰う玉蜀黍だから耐らない」と。それで私は「独逸人は何を喰べて居るか」と聞くと「やはり玉蜀黍にパン種を入れて焼いて喰ってい…

戦争は回避できる 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四九年一月号)

日本無戦時代の回顧 戦国時代、日本においても、どこかで毎目戦争をしていた。それが織田、豊臣を経て、徳川時代になると二百五十年間、一度も大きな戦争をしないですませることができた。もちろん、その時代にも、二百六十一の大名がいて、武装解除をしてい…

北氷洋の聖雄グレンフェル 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年十二月号)

伝道は冒険である ダブリュ・トムソン・グレンフェルは七十数歳、今猶健在でカナダの北方ラブラドルに、医療ミッションを経営している。彼は一八五六年二月二十八日に英国聖公会の信仰を持った貴族的な家庭に生れた、幼い頃から学校がよく出来て、高等学校時…

メノナイトの絶対反戦主義 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年十二月号)

山羊を送ってくれる人々 戦後日本に山羊や牛を親切に送ってくれる人々は、普通ブラザレンとよばれているけれど、実はメノナイトと称せられている団体に属しているのである。メノナイトは四百年以上もつゞいている誠に珍しい宗団で、絶対反戦主義キリスト教的…

青年よ永遠の光源となれ 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年十二月号)

ファウストは海に畑を作ることを夢想した。私は海に牧場を設くることを夢見る。太平洋に鯨を飼い、海豹を大西洋に養えば、世界の人口が百億になっても、食糧に窮することはないであろう。海洋を征服せよ、海洋を。黒潮に国境はなく、怒濤に民族性はない。日…

地球の覚醒 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年十月号)

――世界連邦国家の出発―― 春が来れば、蕾は開かずにはおらぬ。太陽が南から帰れば結氷は解けるものなのだ。霊魂の蕾が! そして人間の意識の結氷が不安定になった日に全人類連帯の世界連邦の芽が生えるのだ。それを空想と笑ってはならない。誰れが南太平洋の…

愛の王国を建てよう 国際平和協会機関誌「世界国家」(一九四八年十月号)

革命は一日にして成る。ザア・ニコラスは、クロンスタットの砲声に驚き。ケレンスキーは戦わずして逃げた。キールの一撃はイザル・ウヰルヘルム三世の王冠を射落した。 然し、愛は一日にして成らない。 愛が一日にして成らないから、民衆は容易なる剣銃の道…

刀剣は止針にも値せず 国際平和協会「世界国家」(一九四八年九月号)

刀剣は止針にも値せず 剣が社会を作っていた時は、もう過ぎた。刀が日本魂だなどと考えている時は、もう過ぎた。愛の外に日本の精神はもってはならない。愛は最後の帝王だ。愛の外に世界を征服する者はない。世界帝国の夢想者は凡て失敗した。刀剣の征服は一…